内容説明
ライティング・マシーン=バロウズ誕生前夜の南米旅行に焦点を合わせ、自己の喪失と発見の過程を辿りながら、『裸のランチ』に至る作家的自立を跡づける。50年代バロウズを誰よりも厳密に読み込み、そのテクストと人生に触れんばかりに接近することで、他者を渇望するバロウズの魂についに共振する斬新鮮烈なライフワーク。
目次
プロローグ 旅のはじまり
第1部 偵察(ライティング・マシーン;マネー・マターズ(お金は大事) ほか)
第2部 リオ・ブラーボの南(メキシコ・シティ;ヤヘ探し ほか)
第3部 インターゾーン(タンジェリーン;自由の国へ)
エピローグ 記憶の中の人たち
著者等紹介
旦敬介[ダンケイスケ]
1959年生まれ。作家、ラテンアメリカ文学研究者、翻訳家。明治大学国際日本学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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western
7
読みやすいし面白い。個々の作品に深く立ち入るというよりは、むしろ伝記的な事実を丁寧に辿りながらバロウズの人生と小説のエッセンスを掴もうとする本。とはいえ手紙と初期作を精読することで、バロウズの作家性確立の契機(南米旅行とヤヘ探究)を明らかにしてもいる。「バイロンとポーはその作品よりも作家自身の人間像のほうが不朽である」みたいなことをボルヘスが言っていたけど、バロウズはいかにもそのタイプだなと思った。2019/11/27
garth
2
バロウズの再読に誘われる。喪失感。魔術的思考。バロウズはつねに一種の霊媒として、どこかにある文学の源泉をくみあげて語ろうとしていた2011/01/09
澤水月
2
切ない。バロウズ作品に通底する切なさの秘密が、緻密な読み込みと実際の諸外国探訪、そして著者の私的体験により解き明かされる。それにしても一時期のバロウズ訳書刊行の立役者、村崎百郎(ペヨトル編集者・黒田一郎)の足跡を辿る本、またバラードの自伝とほぼ同時に出るとは何たる因果か…「村崎百郎の本」「人生の奇跡」と本書を併読するとそれぞれ書かれている人物への密着度がより高まるかと思う。「作品が面白いのは作者が面白いからだ。」、素直に首肯(以前は作品のみ本位に読もうとしていたが今はこの言に強く同意する)。2010/11/30
kokada_jnet
1
「評伝文学」バロウズ版。旦敬介ってバロウズと共鳴するような私的体験をしている人だったんだ。いや、ジャンキーてワケではないんだが。2011/02/17
としん
0
エピローグのバロウズのダメすぎる父親像が泣けるのに笑える。2013/02/02