内容説明
一九七七年に『ものぐさ精神分析』として出版されて以来、熱狂的な支持と一部の反対・批判にもさらされてきた「唯幻論」。この独創的な理論はどのような道筋をたどって生まれたのか。「なぜセックスしない男女関係こそ“清らか”と考えていたのか」「なぜ日本兵の死体の写真を見ると、ひどいショックを受けるのか」著者のあくまで個人的な疑問点から構築されたのが「性的唯幻論」であり「史的唯幻論」だった。そこには、著者が子供時代に経験した母親からの過度な期待と、それにともなう強迫観念が澱のように横たわっていた―。著者が「人生最後の本」として唯幻論の一部始終を総括した本。
目次
第1章 性的唯幻論と史的唯幻論
第2章 わたしの略歴
第3章 偽りの理想的母親像
第4章 強迫観念から生まれた性的唯幻論
第5章 現実感覚の不全
第6章 でっちあげられた「天孫降臨神話」
第7章 善意の加害行為
第8章 消えた我が家
著者等紹介
岸田秀[キシダシュウ]
1933年、香川県生まれ。「人間は本能が壊れた動物である」という前提から、自我や家族、歴史、国家、セックスにいたるまで「幻想」に支えられて成り立っているという「唯幻論」を提唱(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
30
今の読者は岸田秀さんの事は知らないのかなあ?初めて青土社の「ものぐさ精神分析」を読んだ時はショックでした。国家や歴史を精神分析するなんて!アメリカは強迫神経症、日本は精神分裂病者と同等と見なして歴史を紐解くと確かに患者の様に国家が動いているではないか?重要なのはひとつ「人間は本能が壊れている、それを補うために幻想にすがりついてなんとか乗り切ってきた。」あとは本人も自覚する通り、手を替え品を替え同じことを言ってきました。本書はその総決算。最後の著作であろうと著者は言ってます。全ては自分の事が始まりでした。2019/02/05
yamahiko
17
二十歳前に読んだ「ものぐさ精神分析」は、(世間的にどう評価されていようと)私にとって、心の強張りを取り除いてくれた衝撃的といってもよい読書体験でした。それ以降は著者の論にふれる機会はほとんどなかったものの、三十数年ぶりにふれる論理展開に、あの頃何が自分を抑圧していたのか思いだし、懐かしいものを感じました。2019/09/25
karutaroton
14
性的唯幻論に興味があったけどこの本しかなかったので買ったのですが、正直イマイチでした。母親への反発に多くを割いてるのだけど、客観的にはご本人の方に多く問題があるように思うし、それ自体に興味ないからなあ。ただ、男性を興奮させて勃起させないといけないから今の性文化ができてるというのは、面白い視点と思ったし、ご自身と母親の関係を日本とアメリカや、韓国と日本の関係に対比してるのは少し興味深かった。でもやっぱり総合的には不満の部類。あと、中野信子嫌いなんだなあと。2019/11/15
袖崎いたる
7
ふーむ。母親への恨みが募ってるなぁ。ラストのあとがきはエモい。一度はお会いしてみたかった。手を取り、きみの幻想は間違いないと言ってもらいたかった……。この本の刊行イベントは……さすがにないですかね?2019/02/02
hasegawa noboru
3
80代半ばになられるという筆者の人生の楽屋裏を明かした最後の書下ろしだとのこと。筆者が苦しんだ脅迫神経症、人格障害、現実感覚の不全の起点に、母(実父の妹)から受けた呪縛、抑圧的愛への恨みがあったと繰り返される。ひと時ブームになった、唯幻論の背景を明かしておられるわけだ。失礼ながらやや老いの繰り言めくか。2019/03/24
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