出版社内容情報
古くより北信濃・戸隠村の民衆に伝承されてきた鬼女紅葉伝説。謡曲・歌舞伎のモチーフとして、また『太平記』から『南総里見八犬伝』まで、数多の古典に読み解きながら、パロディー論から地域・地方論、物語論等々、縦横無尽に切りこんだ新機軸の伝説論。
その一 鬼の居住権
『太平記』『神道集』『紅葉狩』『新曲紅葉狩』
その二 鬼神が鬼女になる法
『広辞苑』『大辞林』『日本国語大辞典』『辞海』『言海』『大言海』『新編大言海』
その三 紅葉狩りと紅葉退治
『信府統記』『信濃奇勝録』『善光寺道名所図絵』『北向山縁起 戸隠山鬼女紅葉退治之伝』
その四 アイの初仕事
『戸隠山絵巻』『今昔物語集』
その五 風雅の鬼退治と治国平天下の鬼退治
『いぶき山』『雪女物語』『六孫王経元』『平のこれもち』『新撰紅葉狩』『平維茂化物退治』
その六 換骨奪胎盗作パロディー
『●狩剣本地』『仁勢物語』
その七 地方の時代・地域の時代
『楓狩妹背御鏡』
その八 物語総論
『花楓剣本地』『酒天童子若壮』
その九 女武道の時代・鬼女の時代
『平維茂凱陣紅葉』
その十 イデアもどきの海へ
『傾城水滸伝』『紅葉狩吾嬬錦絵』『南総里見八犬伝』
その十一 憑かせ育む
地域はかく語りき
「昔話」は、「昔々ある所に」と、無責任にも「何処」のこととも判らぬままに話を始め、「伝説」は、責任をもって確かな証拠を示して話を締めくくる。そしてどういう訳か、前者は文学作品の仲間として認めもしようが、後者はそんな議論の俎上にものってこない。つまりは前者は芸術かもしれんが、後者は金輪際芸術などではない、と。
伝説において本当でなければならないのは、伝説を伝え育む人々の心だけだ。
紅葉伝説をユーモアたっぷりに読み解いた、大人のための伝説論。