内容説明
このアジアをともに生きてある香港、歴史を越えるために、わたしたちは。「歴史を認めない心と歴史を許さない心のたたかいはいつまで続き、いつどのように終わるのか」「問題」を凝視する実力派歌人の長篇詩歌作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぽち
11
中国返還直前の香港を彷徨う姿を散文詩と短歌で描く。雑踏と驟雨はそれをかき消してはくれず、嫌でも「我」を浮き彫りにするようである、日本を写す鏡であるというアジアに身を置くと、そんな心境になるんだろうか 香港は親日国という連想マスメディアが描く幻想 浅はかなんだけど正直に言えばわたしの世代なんかだとクーロンズゲートを思い出してそれだけでわくわくもする。2017/07/24
かみしの
7
香港は九龍付近を訪問した際の、紀行詩といったらよいのか叙事詩といったらよいのか、訪問記といった様相の詩編。異邦人としての日本人の実感が、湿度95%のスラムから匂い立つ。短歌でいえば「よく肥えた大陸人が美味そうな犬を従え路地よぎりゆく」「魔都たりし記憶の路地を入りゆけば阿片の香の甘き夕闇」「宝石を便器に飾るこの都市の内臓として夜の屠殺場」「なすすべもなけれテレビに廣東語でだだをこねいる蠟筆小新」(蠟筆小新はクレヨンしんちゃん)などは、日本が異化されており驚きをもたらす。暗いトーンが、たまらない。2017/07/02