内容説明
1985年の俵万智の登場以降の現代の短歌を、240首の歌と130の評論への読み、700人の歌人へのアンケートをもとに、歌人にして社会学者が、年代ごと、世代ごとに読みといてゆく現代の短歌入門の書。
目次
序章 現代短歌史研究のために
1章 一九八五年以降の一九八〇年代―「ライトな私」とバブル経済
2章 一九九〇年代―「わがままな私」とバブル経済の崩壊
3章 二〇〇〇年代―「かけがえのない私」と失われた二〇年
4章 二〇一〇~二〇二一年―「つぶやく私」と大震災・コロナ禍という文明災害
補章 現代短歌のカリスマ歌人―岡井隆と馬場あき子
5章 社会調査で検証する現代の短歌と歌人
終章 「口語化」の諸局面とジェンダー、システム化、合理化の問題
感想・レビュー
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manabukimoto
2
現代短歌の傾向と背景。 俵万智を起点としての、現代短歌考察。修辞(ことば)の口語化、かるい主題(こころ)への市民権、私性(わたくしせい)の「私」(作者)≒〈私〉(作中主体)への変化。p48 私不在の自然やら、ただただ内面化したジメジメした己を謳ってきた短歌の決定的な分岐点。俵さんの歌の学問的な位置付けが理解できた。 四章にあった、石井僚一さんの父への挽歌が新人賞を取ったが、父は存命で、父の祖父への思いだった問題が、興味深かった。作品における「私」が誰か問題。 鑑賞と学習。一冊で二倍楽しめた。2023/08/27