内容説明
明治大正昭和にわたる日本人の生活は、中流住宅を一つの基準として、その間取りに映し出されている。この着想のもとに可能な限り多くの実例を調査し、歴史的文献から新聞のチラシまで渉猟した厖大な記録の中から時代々々の生活の知恵と工夫を探り、抽出する。テーマを先行することなく、研究の枠を規定することにもこだわらず、日本人の住まいとは何かという、深い問いだけに導かれたこの本には、中廊下という、これまでむしろ隠されてきた要素が浮上してくる。また、それをめぐる論議を活写する、当時の資料がいわば生の声のままに集められている。百三十年余の時代の変遷と、住問題の変わらぬ生態をそこに聞くこともできるだろう。独自の探求を貫いた孤高の研究者たちの、建築計画学の源泉ともいえる問いがここにある。
目次
第1章 日本住宅近代化の端緒―座敷直入型住宅の誕生
第2章 中廊下型住宅の生成
第3章 中廊下型住宅批判
第4章 西洋住宅の模倣
第5章 折衷式住宅の発展―居間中心型住宅の創出
第6章 停滞の時代
第7章 戦後の住様式論
著者等紹介
青木正夫[アオキマサオ]
1924年山口県生まれ。東京大学第一工学部建築学科を卒業。同大学院特別研究生の時期には吉武泰水研究室の理論的主柱として建築計画学の確立に力を注いだ。1953年、東北大学に赴任、56年に九州大学に助教授として着任して以降、福岡を拠点に研究活動を開始した。この間、住宅・集合住宅を始め農村集落・学校・病院・図書館・保育所・障害者施設など広範囲にわたる建築計画学の萌芽期から発展段階までの研究に関わり、一貫して「史的考察」の重要性を語った。その一方で設計活動にも深く関わっている。83年に現在の西安建築科技大学客員教授に就任、中国への建築計画学の普及や四合院住宅・集落の研究に精力を注ぐ。九州大学定年退官後は引き続き九州産業大学で教鞭を執る。こうした活動と人柄が内外の数多くの学生、研究者、建築家を引きつけて「青木スクール」と呼ばれる場になった。2007年「建築計画学の理論的体系と東アジア地域の学術交流の発展に尽くした功績」により日本建築学会大賞を受賞。同年8月逝去
岡俊江[オカトシエ]
九州女子大学家政学部教授
鈴木義弘[スズキヨシヒロ]
大分大学工学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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