内容説明
大地震が発生し、静岡県にある原子力発電所「スーパーみらい一号炉」が津波に襲われ炉心の緊急冷却装置が働かず大爆発。取材中の新聞記者・桜浩行と金村良美が、気がついたとき、そこは「扶桑国人民政府」という「もう一つの日本」にタイムスリップ。60年安保闘争の時に、ハガチーをデモ隊が殺害したのがきっかけで日米安保条約が破棄されたために、日本は共産圏に編入されていたのだ…。ジョージ・オーウェルの『一九八四年』の日本版ともいうべき恐怖のパラレルワールド小説。
著者等紹介
井沢元彦[イザワモトヒコ]
1954年愛知県生まれ。作家。早稲田大学法学部卒業後、TBSに報道記者として入社。報道局記者時代に『猿丸幻視行』(講談社)で江戸川乱歩賞を受賞。そのあと退社し作家活動に専念する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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それいゆ
40
百田尚樹さんが「傑作だ! こんな面白い本が出ていたとは不覚にも知らなかった」と書いてますが、そのとおりです。20年前の作品だとはとても思えません。ついこの間執筆したかのような臨場感あふれる傑作です。2018/03/02
臓物ちゃん
5
知る人ぞ知る存在だった和製歴史改変SFが、まさかの百田尚樹パワーで復刊!60年安保闘争で革命勢力側が勝利し、北朝鮮型の共産主義国家となった日本をややコミカルに描いた架空戦後ディストピアの佳作。うーん、歴史改変ポイントの選定は悪くないんだけど、せっかく赤化日本を描くんだったらそのまんま北朝鮮体制のコピーにするんじゃなくて、ソ連型の官僚社会とか中国型の農本主義社会とかいろんな側面を見せて欲しかった。展開も強引すぎ。もっと赤化日本を観たい方は矢作俊彦『あ・じゃ・ぱん!』と東直己『沈黙の橋』がオススメ。2017/09/10
Taka_san
4
60年安保騒動で日米安保条約が改定継続されず、護憲派が主張するように平和を願って軍事力を放棄していたら... 自由も民主主義もない貧しい独裁国家としての日本になっている。それはそれは恐ろしい想定だが、一つの可能性というにはリアリティ十分の小説だ。 現に軍事費GDP比2%が世界的趨勢の中で、中国や北朝鮮の危機増大の中にあっても、日本は1%内の微増でも野党とマスコミが騒ぎまくる状況。韓国でさえGDP比2.6%で更に拡大中だ。軍備での抑止力を頑なに否定し、憲法9条があれば平和が維持されるという主張には要注意 2018/10/14
むらり
4
百田氏の「カエルの楽園」と併せて読んでおきたい、平和ボケした日本人への警告の書。2018/01/10
Ohno Takeshi
4
右派と呼ばれる人々が何を恐れ、それが現実なったときに何が起きると思っているのかを描いた小説。20年以上に前に書かれたとは思えないと思わせるのは、地震による原発事故と北朝鮮の脅威が現実味を帯びているでしょう。様々なメディアが自らの信条に基づいて、事象を切り取って論じるのは当然で、様々な意見が言い合えているのは、現在のいいところだと思う。もっとメディアはカラーを出して、お互いの論点に基づいて、社会や政治を切り取り、論争をしてほしい。 そう思わせてくれた小説です。2017/11/06