内容説明
大東亜戦争末期、日米双方四万人を越える死傷者を出した硫黄島。終戦から七年目、観音像を片手に島に降り立つ一人の僧がいた。彼の名は和智恒蔵、元硫黄島警備隊司令である。彼は戦闘直前に本土に帰還し玉砕を免れていた。島に渡った彼が見たものは、髑髏部分を米兵に持ち去られたかつての部下の姿だった…。亡くなった兵の鎮魂と髑髏返還を求め、占領国相手に交渉を続けた“執念の人”の半生を描く。
目次
プロローグ(和尚と呼ばれた人物;遺されたドキュメント)
第1章 僧侶となった海軍士官(いま、玉砕の島は;情報将校としての経歴 ほか)
第2章 地下壕からの生還(山頂の星条旗;生還した兵二人 ほか)
第3章 白骨の島を目指して(GHQに宛てた書状;白骨散乱の衝撃 ほか)
第4章 髑髏を返せ(硫黄島協会の設立;髑髏盗難 ほか)
第5章 日米四十年目の抱擁(“名誉の再会”と命名;思わず「パパさん」と ほか)
著者等紹介
上坂冬子[カミサカフユコ]
ノンフィクション作家。1930年、東京生まれ。1959年、中央公論社より第1回思想の科学新人賞を受賞し文筆活動へ。以後主として昭和史、戦後史に関するノンフィクションの著作を次々に発表。1993年に第41回菊池寛賞、第9回正論大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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金吾
30
思っていた話ではありませんでしたが、全く知らない話であり読んで良かったです。和智大佐に対するかつての部下の評価が和智大佐の人間性を浮き彫りにしているように感じました。アイデア、行動力を支えた割りきりに感銘を受けました。2023/07/11
Our Homeisland
19
硫黄島には20回ほど行ったことがあり、北観音、南観音にも行ったことがあります。往復の船中や硫黄島で硫黄島協会の方々と一緒であったこともあり、よく話に出る和智さんの名前は良く知っていましたが、詳しいことはこの本を読んで初めて知りました。読んでとても良かったです。信念と行動力の人でアイディアもどんどん出した人であったのですね。ご遺骨収集は今も続いています。慰霊墓参の訪島事業は回数など十分ではないので、拡充を要求し続けています。 2024/02/25
新父帰る
4
2006年12月刊。著者の渾身の作品だ。本書の底本は元硫黄島警備隊司令の和智恒蔵の残した手記だ。この著者が凄い所は手記に出てくる人物を探し当てて取材しているところだ。裏取り取材がしっかりしているので、読んでいてその臨場感が伝わってくる。和智の部下に対する慰霊の執念が著者を動かし、傑作品が生まれたと思う。この島で散華した日本兵2万数百名の尊い命の犠牲の上に現代の日本がある事を肝に銘じなければと思う。故安倍総理が米国上下両院で演説された時、栗林中将のお孫さんと元海兵隊の生き残りが紹介されたことを思いだした。2024/09/08
depo
4
積読本。こんないい本を何故積読本にしていたのだろうかと後悔した。安倍首相が硫黄島で跪いて祈っていた写真を思い出した。2021/02/01
Cinejazz
3
「硫黄島警備隊司令海軍大佐・和智恒蔵(わち つねぞう)」硫黄島玉砕の5カ月前に本土に帰還、戦後に天台宗の僧侶となり硫黄島に慰霊、持ち去られた頭蓋骨の返還を要求、硫黄島協会の設立、日米硫黄島での再会など。 誠に稀有な人物の生涯を追った衝撃のノンフィクション。2018/01/07