内容説明
映画、展覧会、WEB、広告、音楽―新しい詩の運動はつづく。書き下ろし多数収録。
目次
果物ナイフの詩
座礁船の詩
恋人たち
決壊
人にうまれて
あさやけの詩
森
恋の閾値
蚊
誠実に女の子〔ほか〕
著者等紹介
最果タヒ[サイハテタヒ]
1986年生まれ。2004年よりインターネット上で詩作をはじめ、翌年より「現代詩手帖」の新人作品欄に投稿をはじめる。2006年、現代詩手帖賞を受賞。2007年、詩集『グッドモーニング』を刊行、中原中也賞受賞。2014年、詩集『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞受賞。小説家としても活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
179
心の中にある、険悪な闇と健全な病みが言葉となって吐露される。優しい殺意、カジュアルな絶望、美しい偽り、途方もない孤独なんかを感じ取る。なんていう独りよがりの感想も激しく否定される。“言葉は通じないものだ、人はそれぞれ、これまでの人生、経験、環境を通して、一つ一つの言葉の意味を捉えていて、だから共通の意味なんて一つだって言葉にはありはしないんだ“と。それでも、最果タヒが発する「ひとりぼっちの言葉」を、これからも僕たちは追い続けたくなるのだ。2020/04/02
いこ
72
タイトル買い。自分の心の中を表す文章力をもたないので、時には詩集もよいなと思った。例えば、こんな。 ぼくがきみを好きだとしても、きみにそれは関係がない。割れてしまったガラスは以前より光を反射するから、本当は境界線などなくしてただキラキラするべきだった。誰かに、恋をするべきだった。 また、こんな。 愛などなくても生きていけるということを、知っていました。本当は。それでも、きみがわたしの中に最初からいたように、思ってしまったから。もう。2月14日が来ている。 詩は書けないけど、時にとても素敵。2019/12/20
ぽてち
33
タイトルがめちゃくちゃいい!「せーの」はお互いが個々であるという自覚の元での掛け声で、だからこそ「せーの」で掛け合わせると生命力が迸る。(というのは個人的解釈)最果さんの詩はどこまでも肯定的な孤独を歌っている。2020/05/16
ちぇけら
23
水平線に分度器をあてがって、あさっては果てしなくとおいねと恋人たちは囁きあう。そんな夢をみたから、蛍光塗料をとっぷり海にながしこんで、うつくしいものに復讐する。だけど実際に海をそめるのは打ち上げ花火の赤だったし、当たり前だけど、それはとてもうつくしかった。かき氷が真っ赤に溶けるまで見ていた。きみが笑って何かをいった、その何かが聞こえるまでの一瞬、きみの笑顔はぼくだけのものだった。これが感情だったらよかったのに。愛、だったらよかったのに。なんでもないぼくの涙が落ちていく、8月をそこにのこして、しんでいく。2019/08/31
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21
いいな、と思ったフレーズを音読しながら楽しんだ。でもそれを切り取って記すのは、いつもやっていると段々野暮で不誠実に思えてきたので、今回はやめます▼自分を愛してくれるセイウチとかいたら面白いな。また朝が来たら、好きなものを好きと言える可能性はどれだけ減ってしまうのかな▼最果さんの詩集は、いつもあとがきが素敵だ。詩を解説しているようにも、逆により「謎めかせて」いるようにも感じられる。2020/02/02