出版社内容情報
☆序文
近年, 化学物質が多くの分野で広く使われており, 大気, 水等の環境や含めた生物等への影響がいろいろ問題となっている。これらの化学物質の中には, その使用を止めるあるいは制限することで環境への放出量を低減させることができるものもあるが, 代替品がない, または, 代替品では期待された効果が出ない等の理由でどうして使わなければならないものもある。これら化学物質の環境への悪影響を最小とするように化学物質の使用を管理するためには, これらの物質の環境中での存在量等を常に正確に把握しなければならない。そのためには, これら化学物質の計測技術を常にブラッシュアップして, 毎日といってよいほどの早さで数が増えていく化学物質に対応していく必要がある。加えて, 問題となる化学物質の数が増えていくばかりではなく, ますます低い濃度が問題となっている。例えば, ダイオキシン類の水質環境基準は, 1 pg/Lとppqの単位である。これを正確に計るためには, JISでは, 試料における検出限界は1 pg/Lの1/30以下でなければならないから, 検出限界は0.03 ppq以下という非常に低い値となる。このような傾向は, ダイオキシン類の測定だけではなく, 金属類や有機金属化合物, 揮発性有機化合物, 内分泌攪乱物質(ダイオキシン類もその1種であるが)等, どの場合にも見られるのが現状である。
また, 最近では測定値の精確さ{これは従来の正確さ(最近では真度という)と精度の総合概念を表す言葉である}や, その程度を表す不確かさが国際的にも問題となっており, 分析機関の認証制度として従来のISO/IECガイド25から, ISO/IEC規格17025に基づいた制度が国内でも進められようとしている。これもダイオキシン類の分析に例が見られるように, 日本で採取した試料を外国で測定した場合と, 日本で測定した場合, その結果が異なった場合にはどちらの分析機関で測定した結果を採用するのかという, いささかグローバルな問題に直結する問題である。
以上述べたように, 環境化学物質の精確な測定を行うには, 多くの問題点があり, 環境計測の研究者が常日頃, 苦心しているところである。そこで, われわれを取り巻く環境化学物質の管理に少しでも役立つことを目的として, 多くの研究者に研究の最新技術を紹介してもらうこととした。
本書が, 環境化学物質の管理や, 環境化学物質の測定を行っている方々等の何らかの参考になれば望外の喜びである。
執筆者
前田 恒昭 電気化学計器
宮崎 章 資源環境技術総合研究所
小野寺祐夫 東京理科大学
平賀 要一 日本化学工業協会
田中 敏之 資源環境技術総合研究所
辰市 祐久 東京都環境科学研究所
今川 隆 資源環境技術総合研究所
秋山 賢一 自動車研究所
田中 茂 慶應義塾大学
村山 昌平 資源環境技術総合研究所
田中 一彦 工業技術院 名古屋工業技術研究所
田尾 博明 資源環境技術総合研究所
浅田 正三 日本品質保証機構
日野 隆信 千葉県衛生研究所
川田 邦明 新潟県保健環境科学研究所
吉永 淳 東京大学
竹内 正博 東京都立衛生研究所
山下 信義 資源環境技術総合研究所
安原 昭夫 国立環境研究所
高橋 保雄 東京都立衛生研究所
田中 敦 国立環境研究所
張野 宏也 大阪市立環境科学研究所
益永 茂樹 横浜国立大学
福島 実 大阪市立環境科学研究所
山崎 慎一 東北大学
宮田 秀明 摂南大学
☆目次
目 次
第1編 大気関連汚染物質の公定法
第1章 大気関連汚染物質
1.大気関連汚染物質と対策
大気汚染と分担/有害大気汚染物質への取り組み/発生源対策
2.公の方法
3.分析方法の成り立ち
4.観測目的と分析手法
5.今後の動向
第2章 水質関連汚染物質
1.わが国の環境庁告示等
金属類およびその他の無機元素, 無機イオン等/有機化合物類
2.ISO法
3.EPA法等
第3章 土壌汚染物質
1.土壌汚染例と環境関連法
2.土壌の汚染に係わる環境基準
3.土壌汚染に係わる公定分析法の概略
調査地点と試料採取/汚染土壌中の重金属類の公定分析法/汚染土壌中の揮発性有機化合物の公定分析法/汚染土壌中の農薬類の公定分析法/汚染土壌中のダイオキシン類の公定分析法
第4章 試験所認定制度
1.試験所認定とは
適合性評価とは/なぜ「適合性評価」が必要か/なぜ試験所「認証」でなく「認定」なのか/品質システム適合性評価(認証)と試験所適合性評価(認定)の差異
2.ISO/IECガイド25
ISO/IECガイド25の試験所への適用/試験所に要求される事項/ISO/IECガイド25が試験所に要求しているもの/ISO/IEC17025
3.認定機関
ISO/IECガイド58/認定審査の実際/技術審査/審査の種類
4.認定取得のメリット
日本における試験所認定制度の状況/試験所側の認定メリット
第2編 環境汚染物質計測の最先端
第1章 大気関連汚染物質
第1節 如如如如如如如如如如如如如如如排ガス中汚染物質
第1節 第1項 固定発生源
1.1 揮発性有機化合物(VOCs)
1.はじめに
2.既存のJIS等公定法による発生源モニタリングの現状
3.VOCHAPs等の発生源形態
4.発生源事業所における実測例
Tenax捕集管を用いた発生源近傍での溶剤蒸気の実測例/携帯型GC-MSによる発生源排出物質のon site測定事例
5.おわりに
1.2 アルデヒド類
1.はじめに
2.排ガス試料採取の方法
採取方法/採取口/溶液吸収法の場合の器具および装置/カートリッジ法の場合の器具および装置/排ガス採取量(Vs)の計算
3.アルデヒド類の分析方法
AHMT法/クロモトローブ酸吸光法/2,4-ジニトロフェニルヒドラジン捕集-ガスクロマトグラフ法(DNPH-GC法)/固相捕集-ガスクロマトグラフ法(DNPH-GC法)/固相捕集-高速液体クロマトグラフ法(DNPH-HPLC法)
1.3 ダイオキシンおよび関連物質
1.はじめに
2.準 備
3.試料の採取と抽出
試料採取/採取後の抽出
4.試料の前処理
標準物質/試料の精製/濃縮操作
5.機器分析
ガスクロマトグラフィー/選択イオン検出/塩素化合物の特徴/高分解能質量分析/機器分析時測定誤差の要因
6.ブランクテスト
7.おわりに
第1節 第2項 移動発生源
2.1 有害大気汚染物質(ベンゼン,