旅ばか日誌―ビテイ骨をすり減らしながら

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  • サイズ B6判/ページ数 459p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784898062227
  • NDC分類 290.9
  • Cコード C0026

出版社内容情報

【書評】 ムルハーン千栄子(元イリノイ大学教授)

読み出すなり、書名の正確さに感心する。バカがつくほど強い好奇心で、見たり、聞いたり、調べたり、感じたりした体験を、綿密に記録し、適切に表現し、深い余韻を残す語り口だ。アジア諸国で《奥の細道》を遍歴するにも、商社や大使館に同窓生が多い東京外国語大OBだから、多彩な情報たっぷりの《生きた百科事典》で楽しく勉強させてもらえる。
モンゴル語で美人は「ブスヌイ」だし、モロッコの挨拶おはようは「鯖が春に減る(サバ・ハル・へール)」とか、日本で流行語になりそうな珍しい言葉もたくさん学べる。
膝栗毛どころか、悪路とカミカゼ運転でビテイ骨が危ない旅ながら、モンゴル草原ではクロネコヤマト、ヤップ島では広島の教習所や神戸の消防署など、社名やロゴ付きのまま走る日本の中古車は見逃さない。生活情報はさらに詳しい。月収なら職業別、物価なら品物に乗車賃に入場料、ガイドの買いたいマンションの価格帯、手榴弾(千五百円)やピストル(一万円)、国際協力隊の月給と住居費にJICAが負担する割合までわかる。
グアムのホテルレストラン協会初の終身名誉会員だけあって、衣食住の環境を見る目は鋭い。メニューの素材や料理法まで、五感を活性化してくれる描写にお腹が空いてくる。食には臆病な私でさえ、雲南名物の寄せ鍋雑炊「過橋米線」や、もち米、豆、砂糖、ココナツミルクを竹筒の中で炊いたタイのハラン・スナック棒などには、誘惑されてしまう。挑戦してみたいレシピ集として、本書を手放せなくなるグルメも多いにちがいない。
ジェンダー学(男女平行研究)の専門家にとっても、うれしい報告がたっぷり。モンゴル草原の円形家屋ゲルを訪問したら、真ん中は空けて布製の壁にそって座るルールが、アメリカ先住民の毛皮テント小屋と同じだ。モンゴル遊牧民の男は左側に、女は右側に座る。女はそのまま出られるが、男はぐるりと時計回りで戸口に向かうのが礼儀という。
ヤップ島には昔の日本の若衆宿みたいな「男の家」があるし、女はトップレスでも上着代わりの首飾りさえ付けていれば、恥ずかしくないそうだ。中国に多い少数民族のうち、ナシ族は通い夫の妻問い婚という母系社会の伝統を残し、女が働いて家計を支え、男は集まってお茶や酒を飲みながらマージャンや楽器演奏で時間をすごす。麗江ナシ族自治県に二十万人いるから、移民を受け入れるかも。中高年男性の目が点になりそうな報告だ。
雲南では、蝉みたいに男の首に抱きつくマッサージを見て、人類最古の商売と兼業らしいと思えば、町に張られた市民憲章が「清く正しく生活しなさい」と諭していた。タイの旧王国首都には、「キャベージ&コンドームス」というレストランがある。元副首相が始めたマジメな事業で、利益の大半はエイズ予防運動にあてる。お楽しみも命がけなのだ。
ウランバートルの強制労働で死んだ日本兵の墓地。アユタヤで屋内に隠された山田長政の像。グアムからハノイ北爆に出動して帰らぬB52の乗員たち。ベトナム難民テント村。ホテル総支配人ならではの回想は、国際的視野と史観が感動をひとしお深めてくれる。

≪Dr.Chieko Mulhern≫ 比較文化学者。文学博士。元・イリノイ大学教授。著書に

「女と男の国境線」、「妻たちのホワイトハウス」、「Japanese Woman Writers」ほか多数。

内容説明

肩の力の抜きどころを知っている男の「旅ばかの日誌」。

目次

モンゴルの旅―草原の風の中へ
ヤップ島探訪―ミクロネシア最後の秘境
中国・雲南の旅―少数民族とお茶の源流を訪ねて
多彩な国・タイ探訪―サバーイ・サヌック・マイペンライ
ベトナムの光と影―戦火の幻影と高原リゾート
ロシア旅行・私の二都物語―モスクワとサンクト・ペテルブルグ
モロッコ一周の旅―サハラ街道・カスバ街道を行く

著者等紹介

小林正典[コバヤシマサノリ]
1932年東京立川市生れ。郷里静岡県下田北高校卒業後家業の農業に従事したのち、東京外国語大学英米学科卒業。1957年日本商工会議所貿易観光部勤務。1960年、藤田観光・小川栄一社長の観光事業構想に惚れ込んで同社に入社。箱根ホテル小涌園、京都国際ホテル勤務、本社国際渉外業務などに携わる。1968年からグアム島でフジタタモンビーチホテルの開発・開業業務を統括。1972年同ホテル総支配人。グアムホテルレストラン協会、グアム日本人会、グアム日本人学校などの設立発起人として活躍。1976年、グアム島名誉市民。その後、藤田観光・目白椿山荘営業支配人、本社営業推進部長などを歴任、1989年再びフジタグアムタモンビーチホテル総支配人。1998藤田観光を退職。現在グアム島に居住しながら、同島の観光開発に多面的に指導を続けている。グアムホテルレストラン協会初のエメリタス・メンバー(終身名誉会員)
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