出版社内容情報
「私を回復に導いたのは「薬」ではなく「人」だった」
生きていくことに疲れ、二度の自殺未遂を起こした著者が、大切なことに気づかせてくれた人達との「出会い」、
そして1本の道でつながっている人生を振り返る自伝的エッセイです。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
65
母の統合失調症と当事者体験を公表した精神科医。前作を読み、著者に感想を綴った手紙を差し上げ、長文の返信を頂き感激した記憶がある。この本は、講演会の場で購入した。座右に置いて、じっくり味読させて頂いております。<人から受けた悲しみや人との関係で生まれた憎しみ・虚無感は、やはり「人との関係」によって修復されていく>という言葉は、過去の、両親の罵り合い、母の妄想からくる暴言等から発する思い――<人は人(の言葉)を浴びて壊れていく>があるからこそ、一層輝く。なお、同じ道産子にして、静岡在住というところに親近感も。2019/09/26
キク
55
著者は母親の統合失調症に苦しみ、研修医時代に2度の自殺未遂の経験がある精神科医師。つまり心のトラブルについて「家族」「当事者」「医師」というそれぞれの立場で関わったことになる。タイトルである「人は、人を浴びて人になる」という格言について、若い頃は「人は、人(の言葉)を浴びて壊れていく」と置き換えていたという。「人の言葉は人を殺す。それが私にとっての真実だった。でも今は人を浴びて確かに人になっていく。心からそう思う」と書いている。多分、どっちも真実なんだと思う。人は、人を壊すし、人によって人にもなる。2021/10/09
たかこ
52
「人を浴びる」とはどういうことか?と興味があったので。統合失調症の母を持ち、自らも精神を病み、精神科医である「家族・当事者・精神科医」のトライアスロンをされた夏苅先生。壮絶な体験から良くここまで回復され、だからこそ心のこもった診療ができる医師になられているのだと思う。2011年と2019年の論文も読んだ。精神疾患に限らず「病」はその家族の人生も変えてしまう。「家族という不条理」の葛藤は自身の成長過程において、なんて重たいものだろう。人と出会い、「語る」ことで回復につながる。ナラティブの力に希望が持てた。2024/09/20
いろは
50
例えば近所に救急車が止まったり、ふと追突事故の現場に出くわしたり、そういう時に野次馬根性で居座る人が、本当に本当に大っ嫌い。なので「善意ある無関心」には多いに共感できた。現役精神科医である著者の生い立ち、自身の心の病、そして現在。テクニカル的に読みやすい本ではなかったが、御本人の経験からでたリアルな臨場感が真っ直ぐ飛び出してきました。「回復に期限はない」良い言葉。★★★2018/05/23
しょうじ@創作「熾火」執筆中。
36
【1回目】図書館本。統合失調症の母を持ち、自らも精神を病みながらも精神科医として歩んだ軌跡を語る。決して洗練された文章とは言えない。むしろ、稚拙でさえある。しかしながら、人が病み、そこから回復するとはどういうことなのかを読者と共に考えていこうという姿勢がうかがえる。人は、たとえ一時病んだとは言っても、人との出会いと交流の中で回復していくというのは、著者の信念に近い。「人を浴びて」人生をつなぎ、人間であることに自分をつないでいく。それで必ず病が癒えるわけではないだろうが、人とのつながりは不可欠なのであろう。2018/09/20