出版社内容情報
◎近代外交の転換に深くかかわる外交家たちの回顧録。未刊行の貴重史料。
◆第1巻◆ 収録史料(外務省外交史料館所蔵)
0.外務省調査部「外交史料編纂事業ニ就テ」(昭和14年4月) 外務省調査部が、外交史料を収集するに当たりその意義を解説した文書。前編後編とに分かれ、前編では外交文書刊行の重要性とその起源が欧米各国の事例を引きながら説明される。後編では日本における外交史料刊行事業が、過去と当時の成果とに分けて、他省庁の編纂事業と共に説明される。外務省がいかなる見解の下、編纂事業を始めたかが伺える。
1.中田敬義「日清戦争ノ前後」(昭和13年10月) 中田敬義(1858~1943)は日清戦争前後、陸奥宗光の外相秘書官として陸奥を助けた。本談話は日清戦争前後の日本外交を知る上で貴重な証言となっている。特に電信課長佐藤愛麿の功績や日清講和交渉の際、李鴻章が狙撃される事件が起きた時の陸奥の迅速な対応など、臨場感溢れるエピソードが種々、語られている。
2.中田敬義「故陸奥伯ノ追憶」(昭和14年12月) 外相秘書官として陸奥宗光に仕えた中田敬義が身近から見た外相陸奥の姿とその時代の日本外交について語ったもの。外務省の整備が進み、それに伴い自信をつけていく日本外交の様子が伺われる。日本におけるアグレマン拒否の先例についてなど興味深い証言が語られている。
3.内田定槌「在勤各地ニ於ケル主要事件ノ回顧」(昭和14年1月) 内田定槌(1865~1942)が外交官として勤務した各地で際会した重要事件について回顧したもの。特にこの中で語られている閔妃暗殺事件に関するものは貴重である。事件勃発直後の在朝日本公使館の混乱ぶりや事件収拾に向けての切迫した対応の様子が事細かく語られている。他にもブラジルでの移民事業などについて語られている。
4.石井菊次郎「日英同盟談判中二六新報事件」(昭和14年3月)日英同盟交渉中に起きた椿事、二六新報報道の英国公使に関するスキャンダル事件を、当時外務省電信課長であった石井菊次郎(1866~1945)が乗り出して落着した事件とその後日談の回顧。秘密裏に進められていた日英同盟交渉とジャーナリズムとの関わり、あるいは当時の政治家、官僚とジャーナリストとの人脈関係が浮き彫りとなる興味深い内容である。