内容説明
「心神喪失・心身耗弱」、そして凶悪殺人犯が野に放たれる?精神鑑定はうそ臭い!刑法はもはや時代遅れだ!こんな三九条があるから被害者は救われないのだ!よろしい、まちがいなく議論はタブーなしで、徹底的にやるべきだ。さてしかし、責任能力とはなにか、なぜ精神鑑定が「うそ臭い」のか。ほんとうに「精神病者=犯罪者=責任能力なし」なのか。いや、そもそも刑法とはなにか。なぜ三九条の条文があるのか。本書は、この厄介きわまりない主題に迫り、冷静に、多角的に、腰を据え、そして時代に先駆けてなされる問題提起の一書である。
目次
第1章 「刑法」は限界なのか(責任という難問;三九条はきれいさっぱり削除されるべきだ ほか)
第2章 「刑法」とは何か(「刑法三九条」を削除する理由はどこにもない)
第3章 司法と医療の現場から(刑法三九条論議の一歩手前で;求められているのはむしろ新しい「責任能力論」である―処遇論と訴訟能力論の重要性を中心に ほか)
第4章 三九条、そのさまざまな問題(刑法三九条何が問題なのか)
著者等紹介
呉智英[クレトモフサ]
1946年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。評論家
佐藤幹夫[サトウミキオ]
1953年秋田県生まれ。国学院大学文学部卒業。批評誌『樹が陣営』主宰。フリージャーナリスト
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シン
2
刑法39条について色々と考える選択肢が増えた気がする。2006/11/22
lily
2
刑法39条をめぐる専門家の論考。39条は精神障害者の裁判を受ける権利を奪っており、削除することが彼らを「人間」にするという考え。「厳罰に処すべきだ」は精神障害者の現状も無視した暴論であり、将来を見据えた矯正教育こそ真の更生であるとして39条を堅持するという考え。それぞれの意見にいちいち納得する。精神障害者の再犯率が低いこと、精神鑑定の適正さなど勉強になった。39条は、「罰しない、減軽する」とし、その後を明記していない。その後は私たちの社会が悩みながら決めることだということを、この条文は伝えている気がする。2016/02/03
koishikawa85
1
呉智英さんらしくもなく、冒頭の文章はひどく雑に感じる。論理が破綻していないか。責任主義という考え方が是か非かはやはりもっときちんと基礎をおさえた人が論ずるべきだろう。そこだけ読んで処分。2016/11/03
がんぞ
0
39条とは「心神喪失者を責任無能力として処罰せず、また、心神耗弱者を限定責任能力としてその刑を減軽」「特に心神喪失と認定されると不起訴になるか、起訴されても無罪となる」理不尽(被害者にとって)。少年法や「確信犯を威嚇する無効性」にも通じ、刑罰の目的は犯罪者の更生にあるという《教育刑思想》が根本にあるが、せめて虞犯精神障害者の予防拘禁、あるいは強制的に性欲抑制剤を服用させるとかしてくれないと正当防衛が常に証明できるとは限らない。一般人なら断固死刑を主張される凶行が不起訴に、市民の声が反映しなくて良いだろうか2012/01/17
kenkenkenkenkenken
0
刑法39条について今現在どんな問題があるのか概観できる内容になっています。2011/01/07