内容説明
毒婦にまつわる“性欲伝説”はどのようにして醸成されたのか?明治十年代初めに誕生し、あっという間に一般化した「毒婦」。その代表格・高橋お伝の女陰は今も東大病院に保存されているという。なぜお伝は毒婦と呼ばれ、その性器は注目を集めたのか?解剖された身体=性器を媒介にして発生させられた「情欲」が、メディアによって「異常」「過剰」の意味を付与され、近代の「性」の言説へとつながっていった過程を追いながら、近代の徒花=毒婦に刻印された幾重もの意味を読み解く。
目次
序章 いま、なぜ毒婦なのか?
第1章 「毒婦」の大立者・高橋お伝の「おしゃべりな」女陰
第2章 解剖された女体=性器をめぐる医学の神話力
第3章 お伝自らが雄弁に紡いだ物語
第4章 新聞ジャーナリズムの誕生と毒婦小説
第5章 鳥追お松と精神の病理解剖
第6章 夜嵐お絹・江戸の追憶の最後の光芒
第7章 明治毒婦列伝
第8章 花井お梅―毒婦の列から外された女性犯罪者
著者等紹介
朝倉喬司[アサクラキョウジ]
1943年岐阜県生まれ。早稲田大学文学部中退。「週刊現代」記者を経てノンフィクション作家となる
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感想・レビュー
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うえ
6
あくまでも、新聞メディアの誕生と掲載毒婦小説といった内容だった。「新聞はなぜ毎日出てるんですか…それは、原初的かつ根底的には、国際的つまりは近代的な経済システムに組み込まれた「商家の利益」のためなのである。ここで商家を「資本」といい直したら、解答の正しさにいっそう磨きがかかるだろう。そう、「資本家」ではなく、あくまで資本と。時間のなかに投げ込まれた富である「資本」の出現によって、情報の先取りが利益に通じるというモチーフ…「一日刻みでもたらされるニュースの束」というあわただしい商品に需要が生じるのである。」2025/04/06
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