内容説明
英文で執筆された『茶の本』は、1906年にニューヨークで出版された。武士道が日本文化の「死の術」を述べるものならば、この茶の本は「生の術」を謳ったものである。明治の知識人岡倉天心は、世界に向けて、東洋、そして日本文化のすばらしさを広めるために、本書を執筆した。100年経ってもなお色あせることのないその主張を、原文の英語とともに堪能したい。
目次
第1章 心の器
第2章 茶の流派
第3章 道教と禅
第4章 茶室
第5章 芸術鑑賞
第6章 活花
第7章 茶人
著者等紹介
岡倉天心[オカクラテンシン]
1862‐1913。明治時代の美術評論家、思想家。本名覚三。東京大学在学中、アメリカ人教師アーネスト・フェロノサと出会い、日本美術に目覚める。卒業後は文部省に入省し、美術行政を担当。1887年、東京藝術大学の前身である東京美術学校を設立。後に校長となる。その後日本美術院を設立。日本美術の保護に取り組むかたわら、英文書『茶の本』(1906年)『東洋の思想』(1903年)などを通して、世界に東洋文化のすばらしさを広めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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非日常口
16
本書は1黄禍論が欧米で流行し、欧米文化にへりくだった時代に、早い話が「東洋をナメんじゃねーぞ」と物申すために天心が英語で声を上げ続けた一冊である。日本の風俗や伝統、そして思想を茶から掘り起こし、日本所以を薄いが濃く指摘した一冊だ。近現代が積み重ねと加飾に重きを置くようになっている中、何を梳いて、空いて、好いたのだろう。欧米基準の現代に生きる私達にとって本書と比べクールジャパンは冷めて聞こえる。現代が流されることの多い時代だからこそ、土台を確認できる一冊。日英の対訳は天心の必死を見られる。2018/05/27
壱萬参仟縁
15
通訳案内士リベンジ用。 6年前の本。 左に日本語、右に英語の 合理的な構成。 重要用語はゴシック(英語はcentury太字)。 「不完全を完成させた者(ゴシ太) のみが、 真の美を見出すことができる」(110頁) =〝True beauty could be discovered only by one who mentally completely the incomplete.〟(p.111) 未完成に完成を見る見方もあるが、 天心は完成にこだわったようだ。 大いなる未完成という思想はラスキン。 2014/04/16
クサバナリスト
4
今月のNHK『100分de名著』の予習にて読了。2015/01/13
むらた
1
素晴しい本。2009/12/17
Takeshi Saito
0
1800年代、横浜出身の思想家、岡倉天心が西洋人向けに書いた、日本の「茶」についての思想や歴史をまとめた本。茶に天人合一を求める道教、規範を求める仏教、社交を求める儒教との歴史的関わりを辿りながら、後半より茶室の空間や歴史がまとめられている。本書な初めて日本文化を学ぶ外国人だけでなく、日本人にこそ読まれることで、海外とより深い国際交流ができるようになると思える。日本人の美意識、人生論の中に、「茶」の教えは強く根付いていると改めて気付かせてくれる本。日英対訳なので読みやすい。2017/01/29