内容説明
鎌倉時代の中ごろ、鎌倉幕府は蒙古襲来の危機に直面し、執権政治にかわって、北条氏嫡流家の得宗による専制支配が進行していた。安達泰盛は、源頼朝の従者で側近として活躍した盛長の曾孫という名門の血をひき、北条時宗の死後、次々と改革の指針を打ち出し、幕府政治の転換点に立った人物である。本書は、盛長・景盛・義景の安達家三代の軌跡をたどりながら、有力御家人層の信頼を一身に集めた泰盛が、弘安八年(一二八五)の霜月騒動によって、新興勢力である得宗被官の平頼綱に滅ぼされた生涯を明らかにする。
目次
第1章 泰盛以前の安達氏(安達氏の祖盛長;泰盛の祖父景盛 ほか)
第2章 安達泰盛と鎌倉幕府(泰盛とその一族・家臣;泰盛と一族の政治的位置 ほか)
第3章 安達泰盛と霜月騒動(御恩奉行泰盛と御家人・御内人;安達泰盛の弘安改革 ほか)
終章 霜月騒動後の鎌倉幕府(得宗貞時と平頼綱;永仁元年の鎌倉大地震と平頼綱の乱 ほか)
著者等紹介
福島金治[フクシマカネハル]
1953年生まれ。九州大学大学院博士後期課程中退。神奈川県立金沢文庫主任学芸員をへて、現在、愛知学院大学文学部教授。専攻は日本中世史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鯖
19
その政策から信仰に至るまで地図等も用いて、安達氏に関する情報を集約した本。ただ日本語が若干あやしく、読みづらい箇所もある。鎌倉時代の他氏排斥はえげつないというか、やりすぎだよなあと改めてしみじみ。三代で滅びた源氏も含め、母方も父方も濃い親戚なのに他氏排斥を繰り返し、そのたび数百人から数千人が死んでたら、安定した政権なんか臨むべくもない。しかも元寇という外圧や地震も頻発して世情不安な折なのに。安達氏を滅亡に追いやった平禅門も操り人形としていた執権が長じた後、彼によって滅ぼされますしな…。鎌倉時代コワイヨー。2015/03/21
鯖
18
刀剣乱舞の鬼丸ちゃん鍛刀のための触媒として再読。執権北条氏と彼等に仕える御内人を牽制し、元寇の後始末に奔走したものの北条氏の粛清によって滅んだ安達泰盛の生涯を追った本。蒙古襲来絵詞といえば前半のオラオラ元も高麗もぬっ殺すぞな鎌倉武士ヒャッハーが有名だけど、後半で恩賞のため鎌倉まできた竹崎季長に対して真摯に接し、彼の働きに見合った恩賞を与えたのが安達泰盛。鎌倉武士のリーダーとしての理想像を描いたもので、霜月騒動の後、竹崎季長が恩人の泰盛を供養したものという見方を教えてくれた本でもあります。2020/03/01
葉紗
2
鎌倉時代の中盤・蒙古襲来において、絶大な権力を振るった若き執権北条時宗の片腕として活躍し、後に鎌倉幕府の覇権をかけた争い・霜月騒動で破れて自害した安達泰盛のお話。 泰盛の業績が片っ端から網羅されています。政治のみならず、宗教面や芸術面まで。しかも泰盛の祖先にまでさかのぼって語ってくれます。ちょっとそれは泰盛の業績とは違うんじゃないか(浅学ですのでわかりませんが)ということまで泰盛の業績にしてくれます。素晴らしい泰盛の本です。 安達泰盛のことが知りたければこの本を読むべきだと思います。 2014/05/26
m__akiyoshi
1
鎌倉時代、北条氏の有力御家人淘汰の総仕上げのような霜月騒動。思いの外、安達氏が北条氏の次に勢力があったのかと思った。零細御家人を救おうとした安達泰盛の改革と、零細御家人を御内人化しようとする平頼綱ら御内人との間に軋轢があり、頼綱が支持を得た、と言う事なのかと思った。私には内容が難しくて正しく読めたのかが不安…2025/03/15
katashin86
1
安達氏が、執権北条氏と幕府草創期からの有力御家人層の間に立つことによって有力になり、それゆえに「得宗専制」の邪魔として排除されるまでの流れがよくわかる。2018/09/22