著者等紹介
栗林佐知[クリバヤシサチ]
1963年札幌市生まれ。富山大学人文学部卒業。版下製作、編集プロダクション勤務などを経て、小説を書き始める。2002年「券売機の恩返し」で第70回小説現代新人賞を受賞。2006年「ぴんはらり」(「峠の春は」を改題)で第22回太宰治賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rapo
5
どこか周囲に馴染めない、生きづらさを抱えた4人の子供たちと天狗。現実と異世界が交錯し不思議な感覚があったが、これは決して御伽噺ではない。マヨタケ坊の来た道も紆余曲折、完全無欠の人などいない。どんなことがあってもどこかで見てくれている人はいる。手を差し伸べるのは自分もできる。だから一歩踏みだせばきっと歩いていける、そんなメッセージを受け取った。2020/08/13
タカラ~ム
5
遠足の途中で『天狗さらい』に遭い行方不明になって翌朝に発見された4人の子どもたち。彼らのその後を描く4つの短編を天狗さらいに関する調査研究発表の音声記録でつなぐ連作短編集。子どもたちはそれぞれに苦痛を抱えていて、そこから逃れようともがいている。天狗とは、彼らが苦痛に正面から立ち向かうように導く存在であり、それはまさに私たち大人のことなのだと感じた。子どもを悩みや迷いから救い、希望のある未来に向けて導く。現実の世界で私たちは『タマヨケ坊』のような存在になれているだろうかと考えた。2020/03/30
timeturner
3
凄いものを読んでしまった。講演者の語り口にこの作者らしいほのかなおかしみが漂い、きつい諷刺も効いていて、初めは笑って読んでたんだけど、中学生達のエピソードから天狗が来た理由がわかってくるとつらい。最後の展開は蓋然性が高すぎてぞっとする。2024/02/06
刳森伸一
3
特に仲が良いわけでもない4人の子供たちが遠足の途中で迷子になり、一か所に集まる。それには、なにやら天狗が関わっているようで…。子供たちの共通点は、周囲と折り合いをつけるのが苦手で「ヘンな子」と思われていること。そんな子供たちと、その後の物語。生きづらさを覚えながらも、実直に生きようとする人たちを描くのが上手い作者の真骨頂が最良の形で現れた小説のように思える。あと、子供たちが坂をごろごろと転がり落ちてくる場面が可笑しくていい。2020/02/11
ヒナコ
2
天狗についての民俗学・郷土史研究者の講演録と、4人の子供たちのそれぞれについての短い物語によって構成されている。 作品は1980年代に神奈川県のとある新興住宅地で些細な遭難事件にまきこまれた中学生4人のそれぞれの出来事を通じで展開される。階層も家庭環境も能力もジェンダーも違う4人の子供たちは、遭難して以来感じるようになってしまった不思議な力に巻き込まれつつ、多感な思春期をそれぞれの方法でサバイブしている。→2020/05/25
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