内容説明
一九一四年、第一次世界大戦。一九一八年秋、社会民主政権誕生。一九一九年春、共産主義革命。一〇〇日余で崩壊、王政復古と国土分断。そして赤色テロ、白色テロ。この激動の時代…!作家の役割は、民衆に勇気と力を与え、権力と闘い、人々を導くことであるという伝統が、ハンガリーに生まれた。一九三三年、コストラーニが大批判に晒されながら示した最後の傑作長篇。
著者等紹介
デジェー,コストラーニ[デジェー,コストラーニ] [Dezs〓,Kosztol´anyi]
1885~1936。ハンガリーの詩人・作家・評論家。オーストリア・ハンガリー二重君主国のサバトカ(現セルビアのスボティツァ)に生まれる。詩集『哀れな幼き子の嘆き』(1907年)で文壇デビューし、生涯にわたり多数の新聞雑誌で文芸記者として詩・小説・評論を発表。とくにハンガリー・モダニズム文学の礎を築いた雑誌『西方』の第一世代を代表する作家の一人。後年、ハンガリー・ペンクラブ会長も務める
岡本真理[オカモトマリ]
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。大阪外国語大学助手を経て、大阪大学大学院言語文化研究科教授。研究テーマは近代ハンガリー文学史・民族文化運動史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りつこ
35
独特のユーモア…ニヒリズム…不条理が香る作品群。連作短編とも違う、断片的な物語の集まり。副題にもあるようにエシュティは作者のもう一つの顔。なれなかった自分、なりたかった自分のように感じた。極端で気まぐれで時に残酷だけれども純粋で子どものまま大人になってしまったようなエシュティの視点で語られる物語と彼と対峙する人(作者?)の視点で語られる物語が入り混じっていて面白い。若いころから詩人として地位を確立していた作者が、自分に求められる社会的な立ち位置をひっくり返すべく書いた作品だったようだ。2019/12/26