著者等紹介
ギンツブルグ,ナタリーア[ギンツブルグ,ナタリーア] [Ginzburg,Natalia]
イタリアの小説家、劇作家。1916年、パレルモ生まれ。38年、レオーネ・ギンツブルグと結婚。40年、アブルッツォ州のピッツォリに流刑となった夫に従う。42年、第一作『町へゆく道』。44年、夫獄死。エイナウディ出版社入社。50年、英文学者ガブリエーレ・バルディーニと結婚。63年自伝小説『ある家族の会話』でストレーガ賞受賞。83年、独立左派の下院議員に選出。91年、ローマの自宅で死去
望月紀子[モチズキノリコ]
東京外国語大学フランス科卒業。イタリア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
36
『こんな風でした』「本当の事を言って」と言っても言わない彼の目を撃った場面が何度も登場。『わたしの夫』と共通するのは不幸な結婚。『夜の声』は変わり種で語り手「私」が冒頭に登場した後しばらく工場主一族の歴史が語られ、途中から「私」が登場する。アマチュア作家がやったなら読者にわかりにくい構成だけれど作者は狙ってやっているのだろう。ファシズムの嵐吹き荒れた頃から戦後に至るイタリア史が縦糸、家族史が横糸。2016/08/12
いやしの本棚
14
ぐさぐさ刺してくるけれど、ギンツブルグの硬質で、語り手が自身を突き放したような文体は、たいへん好み。いちばん衝撃的だったのは「こんな風でした」だな、やっぱり…。アンナ・カヴァンといいギンツブルグといい、淡々とほんとうのことを語る彼女らの声の温度の低さよ。「夜の声」は、悲しみと同じように生きることと切り離せないおかしみもあって、「伯母さんはぜんぜんあなたの邪魔にはならないわ、本を置いとけば、いないも同然よ」という主人公の母の言葉など、自分のことを言われているようでほろ苦くも可笑しかった…2016/09/06
ぞしま
12
ここ数年(個人的に)追える作家がおらず、どこか鬱々とした読書をしている感覚があったが、それは自身の怠惰さとも大いに関係しているので、その辺にうっちゃっていたのだが、本書を読み、自分はこういうのが好きなのかと改めて思った。(ばかみたいな話だが。) 解説にあるようにパヴェーゼはナタリアの文体を≪泣き言≫と評したらしいのだけど、至言だなと思う。二人の信頼関係を想像してみたりする。 『ある家族の会話』が好きで本書を読んでいない人には強くおすすめしたいです。 2019/11/06
Mana
1
「町へ行く道」と一緒に読んだら、なんだかどれがどの話だったか分からなくなってしまった。結構印象が似てる作品が多いから。あとちょっと翻訳が分かりにくい。彼が、彼が、みたいなのがよく出てくるけど、誰の台詞か分からなくなっちゃう。2016/08/20
i-kom81412
0
「こんな風でした」「わたしの夫」「夜の声」の3篇に通底するのは、美人でもない(そしておそらくブサイクでもない)質素で無骨な女性たちの、幸せではないけれども自由な心を持った飾り気のない語り。「夜の声」、そのものズバリ「夜の声」が何なのか、どういうものかが語られるのではなくて読み終わった読者にだけわかるようなタイトルがとってもステキ。それを直訳してくれた翻訳者のセンスも素晴らしい。2018/01/05