著者等紹介
ネミロフスキー,イレーヌ[ネミロフスキー,イレーヌ] [N´emirovsky,Ir`ene]
1903~1942。ロシア帝国キエフ生まれ。革命時パリに亡命。1929年「ダヴィッド・ゴルデル」で文壇デビュー。大評判を呼び、アンリ・ド・レニエらから絶讃を浴びた。このデビュー作はジュリアン・デュヴィヴィエによって映画化、著者にとっての第一回トーキー作品でもある。34年、ナチスドイツの侵攻によりユダヤ人迫害が強まり、以降、危機の中で長篇小説を次々に執筆するも、42年にアウシュヴィッツ収容所にて死去。2004年、遺品から発見された未完の大作「フランス組曲」が刊行され、約40ヶ国で翻訳、世界中で大きな反響を巻き起こし、現在も旧作の再版や未発表作の刊行が続いている
芝盛行[シバモリユキ]
1950年生まれ。早稲田大学第一文学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
8
いつもながらイレーヌの描く人々の姿は実に生々しい。ユダヤ的人物の描写は彼女の処女作『ダヴィッド・ゴルデル』の時点ですでに完成の域に達していたが、本作ではさらに強くユダヤ的であるとは何なのかについて真摯に問いかけている。アダという”不遜な”女性とそれを取り巻く人間の人生の有為転変がここにある。ここまで小説が真実らしく、もしくは真実のさらに奥にあって私たちにはそのおぼろげな影しか感得できないような理念的な世界を描けることは恐るべきことだ。あの『フランス組曲』を濃縮させた、信じ難い密度の高さを誇る小説がこれだ。2016/04/01
belle
7
熱くなった剣の先が胸に深く刺さった。三つ巴の愛の嵐。表紙カバーに浮かび上がったイレーヌの顔がアダに重なり、彼女とヒロインの行く末を思いやる。ラストには温かい言葉が響いたが、その先の現実も激しく迫って来る。イレーヌ・ネミロフスキーの作品はこれで5冊目だ。2019/08/28
夏子
4
1934年実際にあった詐欺事件であるスタヴィスキー事件をモデルにした小説。ロシア出身のユダヤ人の男女3人のパリを舞台にした人間ドラマ。異邦人である事がその人の人生にどんな風に影響を与えていくのを考えさせられる。主人公達の未来に何が待っているかは歴史的事実として知っているだけに余計に辛い。原題の「犬ども狼ども」も凄いインパクトでした。2016/07/14
読書実践家
4
ポグロムなど、ヨーロッパにおける弾圧。身分や人種の壁。人間の心が生み出す壁は世界中にある。2016/01/31
刳森伸一
3
アダを含む四人の男女が織りなす愛憎劇。その背後には階級間による相克や憧れなどがある。日本語のタイトルは「アダ」だが、直訳すると「犬ども狼ども」となるらしい。「犬ども狼ども」はアダを挟んで対立する二人の男とその男が所属する階級を象徴していて、個人的には、直訳のタイトルが良かった気がする。2015/09/08