著者等紹介
ネミロフスキー,イレーヌ[ネミロフスキー,イレーヌ] [N´emirovsky,Ir`ene]
1903~1942。ロシア帝国キエフ生まれ。革命時パリに亡命。1929年「ダヴィッド・ゴルデル」で文壇デビュー。大評判を呼び、アンリ・ド・レニエらから絶讃を浴びた。このデビュー作はジュリアン・デュヴィヴィエによって映画化、彼にとっての第一回トーキー作品でもある。34年、ナチスドイツの侵攻によりユダヤ人迫害が強まり、以降、危機の中で長篇小説を次々に執筆するも、42年にアウシュヴィッツ収容所にて死去。2004年、遺品から発見された未完の大作「フランス組曲」が刊行され、約40ヶ国で翻訳、世界中で大きな反響を巻き起こし、現在も旧作の再版や未発表作の刊行が続いている
芝盛行[シバモリユキ]
1950年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。2008年以降、イレーヌ・ネミロフスキーの翻訳に取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
24
親の決めた婚約者がいるアルドゥロ製紙の御曹司ピエールと醸造業者の娘アグネスが周囲の反対をおして結婚。第一次大戦を経て子供も出来るがやがてもう一つの戦争がやって来る。第二次大戦中に書かれた作品。「多くの悩み、多くの苦しみ、多くの試練、それがこの世の富なんだ。」というピエールの父シャルルの言葉がテーマ。2015/08/04
のりまき
15
身分違いの愛を貫く若い二人。これから生活が始まろうとするときにちょっぴり滲む後悔。リアルでとても良い。薄い本なのであっという間に時間が進んでしまう。ぼーっとしてるように感じてたアグネスとピエールが戦禍の中で逞しさを見せる。これからどうやって生き抜くのだろうと先が読みたかったけど、ネミロフスキー自身もその先を見ることが叶わなかったのだと思うと非常に悔しい。2021/04/27
きゅー
15
フランスの片田舎を舞台とした四世代の物語。たった200頁の中に、父と子の確執、男と女の愛憎、2度の大戦などを詰め込みながらも、主役の二人に焦点が当てられているため、物語は肥大化せず、純粋にプロットを読み愉しむことができる。何度でも書いてしまうが、イレーヌの人物描写は本作でも素晴らしい。特に登場人物の性格の暗い一面を描きながらも、それが嫌にならないのはどうしてだろうか。冷徹な描き方ではあるが(そしてそれが真実なのだろう)、登場人物を突き放してはいない。たんに好きという言葉では片づけられない魅力を持った一冊。2014/08/12
belle
11
~二人は一緒だった~で小説の幕が上がる。大きな戦争が二つ起きた時代。フランスのある地方都市は町も人も否応なく巻き込まれていく。紆余曲折はありながら、人々はお互いを気遣い助け合う。そして冒頭の二人は「この世の富」を実感した。訳者あとがきにあるように、フランス敗北の現実の中で書かれた作品。作者の過酷なその後はもう目の前に迫っている。 2018/02/14
きりぱい
9
面白かった。資産家の息子と中流の娘。財産持ちの許嫁を袖にするから、ほれ見たかとタイトルに絡んできて、愛が貧乏に負ける皮肉か、と安易に考えたら全然違った。幸せな生活も戦争、また戦争と二世代で出征。時代の厳しさから家の確執、人間関係の心を悩ませる問題と、苦しい中で生き抜くキャラが狭い中で切れずかかわり合い、その描き分けもきめ細かい。危うくみせながら不安定の中の安定というか、ゆらがなかった夫婦の絆にほっとする。ドイツの侵攻を受ける状況など、『フランス組曲』が思い出される。2015/09/24
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