著者等紹介
ネミロフスキー,イレーヌ[ネミロフスキー,イレーヌ] [N´emirovsky,Ir`ene]
1903~1942。ロシア帝国キエフ生まれ。革命時にパリに亡命。1929年「ダヴィッド・ゴルデル」で文壇デビュー。この作品はジュリアン・デュヴィヴィエによって映画化、彼にとっての第一回トーキー作品でもある。34年、ナチスドイツの侵攻によりユダヤ人迫害が強まり、以降、危機の中で長篇小説を次々に執筆するも、42年にアウシュヴィッツ収容所にて死去
芝盛行[シバモリユキ]
1950年生まれ。早稲田大学第一文学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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miyu
39
己の才覚や勘のみを頼りに巨万の富を築き老いたゴルデル。彼は闇雲に金を貯めるより得た資金でさらに事業に投資する。金より働いた結果や働くこと自体に取り憑かれた人のようだ。だが妻を始めその愛人や娘、共同経営者は彼の生み出す金にしか興味がない。愛人と贅沢する無駄金のため相談もなくゴルデルを出し抜こうとして失敗した共同経営者に泣きつかれ、にべも無く断られると彼は自殺してしまう。ゴルデルの妻は身を飾る贅沢にしか興味がなく、若いだけで美しく馬鹿で我儘な娘も父親に執拗に強請(たか)り続ける。果たしてなんと寂しい人生か。2015/07/18
星落秋風五丈原
30
娘の言うままに金を出すダヴィッドが‘娘に甘い駄目パパ’かと言われると違う。「金がいる時だけ、“大好きなパパ、お父様、ダーリン”とくる。だが、愛情のかけらだってありゃせん」と彼女の目的などとうにお見通しだ。それにも関わらずダヴィッドは最後の瞬間まで彼女に愛情を注ぎ続ける。更に衝撃的な事実が妻の口から明かされるが、ダヴィッドの愛情は揺るがない。当時「ユダヤ人が嫌いなユダヤ人作家」と言われたが、その非難は当たらない。娘はシャイロックの娘よりも非情だったが、シャイロックよりも情が遥かにある父親像を創り上げたのだ。2015/08/03
きゅー
11
60代後半のユダヤ人商売人のダヴィッドの欲するものとはすなわち金でしかない。そのちっぽけで強欲なだけの人間だと思われたダヴィッドが次第に変わりゆく。それは、人間として成長するとか、改心すると言った形での変化ではなく、彼の偉大さとは「あれか、これか」を自分の意志で選び、その結果を恐れないことにある。自暴自棄とも違う、ようやくにして彼は受取る愛ではなく、与える愛に目覚める。そしてこの短く、じめついた物語は宗教的な高揚感のうちに結末を迎える。2014/06/20
タカラ~ム
11
久しぶりにグイグイと引き込まれる作品だった。主人公のダヴィッド・ゴルデルは大金持ちだが、金持ちの御多分にもれず幸せそうには見えない。妻とも娘とも金でしか繋がっていないし、信頼できる友人もいない。金がすべての源であり、金がなくなれば彼には何も残らない。金を持つことの不幸がこれでもかと描かれる。この作品が書かれたのは1929年でちょうど世界恐慌に時代。世界中で多くの富裕者がゴルデルと同じような運命を辿ったかもしれない。そして、現代でも同様のことは起こり続けているように思う。2014/06/06
るか
8
「私がユダヤ人の欠点ばかり描いたとはなんと不当な言い分でしょう! 私にしてみればその逆で、私の誇りとする民族的な徳性、勇気、不屈、誇り、一言でいうなら最も高い意味での”毅然たる魂”を心を込めて描いたんです」ーーネミロフスキー。周囲からは守銭奴、冷血漢と蔑まれる主人公ダヴィッド・ゴルデル。自他ともに憐れむことなく猛烈に働き無一文から一財を成したあるユダヤ人の生涯と彼に群がるさもしい人間たちが活写されている。1929年の発表直後に映画化されたというが、いま映像化してもじゅうぶん愉しめそう!2020/05/15
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