内容説明
重い病の床で、アジェンデ政権の危機と、増大する軍の力を感じながら、ネルーダはどれほど緊張した精神のドラマを生きていたか。病床のシーツの中で書かれ、イスラネグラのネルーダの家を訪れたロサーダ社オーナーの息子に本人から手渡された詩集。
目次
1 仮面
2 発明
3 麦の穂
4 大地
5 招かれた者
6 人間たち
7 別の人間たち
8 資源
9 祝祭
著者等紹介
ネルーダ,パブロ[ネルーダ,パブロ][Neruda,Pablo]
1904~1973。チリの国民的詩人であり、外交官、国会議員。1971年ノーベル文学賞受賞。南米ではゲバラと並んで左派のヒーローの一人。軍事政権のクーデターが起こり、チリの民主政権が崩壊した12日後に死去
吉田加南子[ヨシダカナコ]
1948年東京生まれ。詩人、フランス文学者。学習院大学教授
竹久野生[タケヒサノブ]
1940年東京生まれ。辻まことを父として生まれ、竹久不二彦夫妻の養女として育てられる。1968年より造園家の夫と共にコロンビアに移住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
92
ノーベル文学賞を受賞したチリの国民的詩人ネルーダ晩年の詩集。素晴らしい。この世の悲惨さを正面から見据え、絶望と希望の間を揺れ動きながら、最終的には世界と生きることを力強く肯定していく言葉に圧倒される。頭の中で組み立てるのではなく、大地を踏みしめながら言葉を紡ぎ出している姿勢が翻訳を通しても伝わってきた。2014/08/29
フム
15
『2000年』は病床のシーツの中で書かれた。軍事クーデターが起こり民主政権が崩壊していく中で、自らはまもなくこの世から去っていく、その中で2000年という民衆にとって全く新しい時代が開かれていくことを彼は信じている。それをうたっている。どんなに暗い現状もそれを引き受けるべきは私たちだ。未来を生きる人に残すのは希望の言葉がいい、未来を呪う言葉ではなく。「そうだ 疑いの余地はない 私の骨格は 時には言葉でできていた 雨風にさらされた骨の硬さを持つ言葉で そして私は祝うことができた 今起きていることを→2019/04/09
ロビン
13
チリのノーベル文学賞詩人ネルーダが、癌に侵されながら病床で書き上げた最晩年の詩集。竹久野生によるイメージ豊かな白黒の版画が添えられている。2000年という新たな世紀を迎える日を見据えて、民衆の声となることを自らの神聖な義務とした詩人は、チリのどこかにいるラモンに、ゴンザレスに、名もなき漁師に、時には凱歌を上げる資本主義者にそして『ペドロ・パラモ』に倣って自らが「死者」に成り代わり、人生を歌い上げる。詩人は苦しめられたチリの人々と大国の搾取と闘った歴史を「言葉の粘り強い骸骨」となって世界のために残したのだ。2023/07/04
吟遊
8
チリの詩人が最晩年に死を意識しながら遺した詩集。南米文学の起点の一つ『ペドロ・パラモ』を下敷きにした箇所も。 スペイン語専攻でない方の翻訳(英仏参照)というところ、どこまで原語を伝えているか、気になる。2016/02/18
三枝
2
不安の残る希望。その確信の重さに押し潰されそうになる。自分が決して見ることのない、もう存在していない世界を、詩人はただ静かに見つめている。原詩が載っていればもっと良いのにな。2012/04/12