内容説明
人に与えられているものは何か?人に与えられていないものは何か?人はなんで生きるか?この謎に答えられたらあなたも天使―。
著者等紹介
トルスタヤ,ナターリヤ・オレゴヴナ[トルスタヤ,ナターリヤオレゴヴナ][Толстая,Наталиа Олеговна]
レフ・トルストイの次男イリヤの孫オレーグ画伯とグラフィック画家タチヤーナの長女として1954年モスクワで生まれる。1979年、シトロガーノフ芸術院絵画科を卒業。ヨーロッパ各地、北欧、米国、カナダ、シンガポールでの展覧会に出品、ミニマリズム画家として高い評価を受ける。ロシア政府が選出した〈最も優れた20世紀ロシアの女性画家〉の一人としてトレチヤコフ美術館にも作品が納められている
デイヴィス,ふみ子[デイヴィス,フミコ]
福岡県生まれ。モスクワの民族友好大学(現・ロシア大学)卒業。1999年から2002年まで二度目のモスクワ生活を経験。トルストイの玄孫で画家のナターリヤ・トルスタヤとの出会いを機にトルストイの家出の謎を追う『トルストイ家の箱舟』を四年にわたって執筆し2007年に群像社から刊行した。現在はシンガポール在住。陶磁器絵付けとロシア伝統芸術の細密画塗り(パピエ・マシェ・ミニアチュール)のアーティストを兼ねてNOBBY ARTギャラリーを主宰・経営する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ
40
大昔中村氏の訳で読んだのを思いだし手に取る。何と言う秀作!寝る前に読んだせいか、言い難い被抱擁感がこみあがる。読み始めは違和感、民の言葉が博多弁なのだ。訳者はこの作品を世に出すに際し、こだわりを持ったとか(巻頭巻末に詳細な弁)ロシア人が身近に感じられ 余りの温かさに、思わず、声に出して読み始めた。挿絵はトルストイのひ孫。作品に脈々とした血の流れを感じる。落穂拾いにこめた旧約聖書「ルツ記」中の物語は初めて知ったとはいえ、どこかで見聞きしたような感覚。無関係だけどかさこ地蔵を思いだす。2017/03/12
ケニオミ
13
前々から読みたかった一冊です。人は何によって生きるのか? 博愛主義者のトルストイの集大成という意味合いの短編です。他の皆さんから、方言のせいで読みにくいとの感想が多々ありましたが、九州出身の僕としては、何だか父親や母親が話しかけているような、暖かい印象を受けました。やはり人は自分自身で全てできるわけではなく、周りの人達から受ける恩恵で生かされていることを再認識しました。そして、最近周りの人達から受けた恩恵に改めて感謝し、それを伝えたいという気になりました。機会があれば是非手に取ってもらいたい一冊です。2020/07/25
壱萬参仟縁
9
人はなんで生きるか? そして、今日も生きようとしているのか? 「一生けんめい働いて稼いでも稼いでも、かたっぱしかパン代に消えてゆく」(11頁)。国民年金がごっそりひかれていたのもショックだったよ・・・。人は、愛によって生かされている(71頁)。お金持ちは? という問いになっていく。お金だけなのか、と。何を愛するか、何から愛されるか? ということが、生きることの目的のようである。愛し、愛される、という人間関係、自然と人間の関係は、なかなか厳しい。2013/05/22
Miyoshi Hirotaka
6
ロシア語には方言がないが、農民を主人公にするトルストイの話には方言訳がよく似合う。靴職人セミョーンの九州弁は、素朴な人間が真実に生きるところにはどこにでも優しい神の配慮が隠されていることを鮮やかに描きだしてくれる。これは、まるで肩車をされた子供が開ける視界に素直に喜ぶようにロシアの巨人の肩に乗せてもらって遠くが見えるようになるのと同じだ。人に与えられているものは何か?、人に与えてられないものは何か?、人はなんで生きるか?これがわかっていないと天使は失格。落ちこぼれ天使が人間に学ぶ成長物語でもある。2013/07/06
保山ひャン
4
堕ちた天使が知る三つの意味。「人々には何が与えられているのか」「人に与えられていないものは何か」「人は何に生かされ、生きているのか」恩返しの民話のような話で、天使はやはり子供の形態ではなく、青年なのだな。2017/03/15