内容説明
劫を経て再び太宰文学に親しむために最良の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ユウユウ
31
以前、ちくま文庫の太宰治で、カチカチ山だけ読んだことがあります。その時のおもしろさというか視点の新鮮さは忘れられない。今回、改めて読んでみてカチカチ山の衝撃を他3作は超えては来ませんでした。終わり方が無常感があるものが多かったせいでしょうか。先日のニュースで自筆原稿が見つかったとのこの作品。また何年か後に読むと印象が変わるかな。2019/04/20
gtn
24
土産の貝殻を開けた途端、白髪の老爺になった浦島太郎。それが不幸というのは先入観ではないかと疑う太宰。その上で、年月の経過と忘却は「人間の救ひ」であると結論付ける。確かに良い出来事は年とともに美化し、悪い思い出は薄まる。乙姫の土産は、自然の摂理であり、慈悲と分かる。防空壕の中で、そんな空想をしているという体もいい。人はどんな環境にあってもロマンに思いを巡らすことができる。2021/06/18
ヒラP@ehon.gohon
17
読みはじめは、昔の文体なので戸惑いもありましたが、太宰治のシニカルながらシャイな姿に、いつか話の中に呑み込まれていました。 選ばれた四編の昔話と太宰治のスタンスは、「舌切雀」に書かれていますが、英雄伝的な噺を避けて、人間味、社会性の中に太宰治の主観を持ち込んだ所に好感を持ちました。 「瘤取り」の偶然性、「浦島さん」の疑心観、「カチカチ山」の愛憎劇、どれも親しんだ昔話を超越しているのですが、桃太郎の話を枕にしたような「舌切雀」の艶っぽさには恐れ入りました。 2020/04/24
まる子。
3
昔話を娘に読み聞かせている父親が、頭の中で考える別のお話。 理屈っぽい父親の性格によって、お話もなんだか小難しくなったりして。 面白いけど続けて読むにはちょっと体力がいる、そんな本でした。2011/08/06
麻友
2
図書館で借りて読了。ラジオでチラッと聞いた「浦島さん」が気になり読んでみました。私としては舌切雀の冒頭で桃太郎を書かない理由をつらつら書いてた部分はいらないかな・・・と。全編通して面白かったですが。2017/11/21