内容説明
劫を経て再び太宰文学に親しむために最良の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ユウユウ
32
以前、ちくま文庫の太宰治で、カチカチ山だけ読んだことがあります。その時のおもしろさというか視点の新鮮さは忘れられない。今回、改めて読んでみてカチカチ山の衝撃を他3作は超えては来ませんでした。終わり方が無常感があるものが多かったせいでしょうか。先日のニュースで自筆原稿が見つかったとのこの作品。また何年か後に読むと印象が変わるかな。2019/04/20
gtn
24
土産の貝殻を開けた途端、白髪の老爺になった浦島太郎。それが不幸というのは先入観ではないかと疑う太宰。その上で、年月の経過と忘却は「人間の救ひ」であると結論付ける。確かに良い出来事は年とともに美化し、悪い思い出は薄まる。乙姫の土産は、自然の摂理であり、慈悲と分かる。防空壕の中で、そんな空想をしているという体もいい。人はどんな環境にあってもロマンに思いを巡らすことができる。2021/06/18
ヒラP@ehon.gohon
17
読みはじめは、昔の文体なので戸惑いもありましたが、太宰治のシニカルながらシャイな姿に、いつか話の中に呑み込まれていました。 選ばれた四編の昔話と太宰治のスタンスは、「舌切雀」に書かれていますが、英雄伝的な噺を避けて、人間味、社会性の中に太宰治の主観を持ち込んだ所に好感を持ちました。 「瘤取り」の偶然性、「浦島さん」の疑心観、「カチカチ山」の愛憎劇、どれも親しんだ昔話を超越しているのですが、桃太郎の話を枕にしたような「舌切雀」の艶っぽさには恐れ入りました。 2020/04/24
まる子。
3
昔話を娘に読み聞かせている父親が、頭の中で考える別のお話。 理屈っぽい父親の性格によって、お話もなんだか小難しくなったりして。 面白いけど続けて読むにはちょっと体力がいる、そんな本でした。2011/08/06
sakura
2
職場の人に意外と面白かったよと勧められて読んだ1冊。 子どもの頃に読んだことがあるお伽話が、こんなに裏があった??と思いながら、お伽話のイメージをガラリと変えてしまう太宰治さんの表現が面白かった。2018/11/08