内容説明
「ふだん山で食する野菜は?」「さよう、みづ、ほうな、しどけ、うど、しめじ、きんたけなど」「してそれはあなたごじしんがおつくりになるのですか?」「野菜はお日さまがおつくりになるのです」のびのびと放胆でかつ諧謔精神に富む山男、対するは市中の紫紺染に熱心な人たち廿四人。南部染を巡る内丸西洋軒でのやりとりを描き、愛すべき山男の“純朴”を教える賢治の寓話。26点の木版画が相俟って世の人の正体を……。
著者等紹介
宮澤賢治[ミヤザワケンジ]
1896(明治29)年、岩手県花巻市生まれ。盛岡高等農林学校卒。近隣の貧しい小作農民たちの物心両面にわたる救済を期し、1926(大正15)年教員生活に終止符を打って羅須地人協会を設立、農民芸術の振興に邁進する。志半ばにして病を得、1933(昭和8)年早世。盛岡中学在学中より創作に励むが、22歳で初めての童話を執筆、以降、創作と農業指導に献身した
たなかよしかず[タナカヨシカズ]
1949(昭和24)年、東京都練馬区生まれ。武蔵野美術大学彫刻科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みーまりぽん
16
宮澤賢治にこんな作品があったのか~ 童話・寓話の類ではない短篇。 伝統の絶えかけていた盛岡の紫紺染を再興しようとする動きの陰で、紫紺をよく知るであろう山男を酒宴に招いて話を聞き出そうとしたことがあったとさ、というだけのお話。 版画がよい味付けとなっています。 この出版社は良い本多いですねー(^-^)ノ2016/05/28
kanata
4
南部に伝わる紫紺染のことを皆一度捨て、まあ復活させるために情報を引き出そうと、ある怪しい男を会合に招いた。人間のいやらしさ(お前にもう用はない)と、酔っぱらったらちらっと情報を思い出す男のコミカルさ。2017/07/08
ネル
3
宮沢賢治の知らなかった本を、図書館で見つけて借りた。紫紺染というのも初めて知った。父の故郷が出てきたこともあって、父が生きていたら、紫紺染や、それについて賢治が書いていたことも話したかった。賢治は故郷岩手の誇れる紫紺染のことを、知って欲しい、忘れないで欲しいという願いを込めて書いたのではないかと思えた。版画が良い味を出している。2014/05/24
yasuko
2
宮沢賢治の書いた物語であるが、こんなものがあるとは知らなかったし、短い物語だったので暇つぶしにと図書館から借りてみた。不思議な話だった。たなかさんの版画が本の挿絵に使われているのだが、この版画がめっちゃ可愛くて好きだった。物語はあっという間に読めてしまい、何を言わんとしているのかよくわからなかったが、この版画はページをめくるたびに心の癒しになった。2012/07/07