内容説明
物語は、フランス語の授業中に机にうつぶしてイビキをかいている広瀬小二郎の姿から始まる。やがて広瀬は友人・杉野正人からある女性の東京案内を頼まれる。「妙齢の美人かもしれないぜ…」。軽快な語り口でキャンパス・ドラマの幕が開く。広瀬、杉野、石橋渡、洞口謙介の大学生四人組は、一台のおんぼろ車を後生大事に運転する“ガラ・クラブ”の仲間でもある。このぼろ車で夏休みはどこへ行こう?まずはベラミに集合せよ。ロード・ノヴェルも快調に走り出す。舞台は大学のキャンパスから信州の善光寺へ、さらに蓼科の高原へと展開する。天下無類の山野百合子女史、豪放磊落なベラフォンテ和尚、謎の美女吉野玲子と、多彩なキャラクターも登場…。爽やかな筆致のうちに、健康で明朗な学生たちの姿をいきいきと描いた、小沼丹異色の青春ユーモア小説「風光る丘」九百余枚。「懐中時計」刊行一年前に上梓されながら、作品集・全集に未収録の幻の長篇、四十年ぶりの復刊。
著者等紹介
小沼丹[オヌマタン]
大正7年、東京生まれ。昭和14年、明治学院在学中に「千曲川二里」を発表。井伏鱒二を訪問、爾来師事する。15年、早稲田大学文学部英文科入学。33年、早稲田大学文学部英文科教授。44年「懐中時計」刊、読売文学賞受賞。47年、在外研究員として半年間渡英。49年、平林たい子賞受賞。平成1年、日本芸術院会員。8年11月歿
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感想・レビュー
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ぶうたん
6
全集未収録の長篇小説。同じ版元なのに何故そうなったかは不明。単行本になっているのに何でだろう。作品自体はクセのある人物こそいるものの、悪人は登場しない心地の良いもので、当然著者もその前提で書いている明朗青春小説である。主人公の大学生をはじめ現代とはだいぶ距離を感じるが、気にはならない。新聞連載のためか筋書きが少々行き当たりばったりでさなのはご愛嬌で、最後は蛇足と感じるような秀作とも言えないものだが、安心して楽しめるのは確かではある。いやはや青春だなあ。2024/10/28
sasa-kuma
3
青春小説というのでしょうか。さわやかで微笑ましく、楽しかったです。始まりがちょっと謎解きのような入り方でそこが好きでした。その雰囲気がずっと続いてくれたらもっと好きなんだけどな。登場人物の描写がおもしろい。 2008/01/15
きりぱい
3
山野女史と亀子の厚かましさには辟易するけれど、まあ、それがなければユーモアにつながる展開も半減したろうし、そこを我慢すればあとはもう、澄み切った青春の爽やかさにのめり込んでしまう作品だった。大学生4人が夏休みに長野へ向かうボロ車での旅は、友情、恋、ハプニングと、心憎くもコミカルにつながり、微笑ましく、品よく、純情にちょっと胸もぴりっとくるストーリー。活力の低下を一掃してくれるような開放感感じる読み応えに大満足。2010/08/16
7kichi
3
やや冗長。おまけに鬱陶しい婆様。それより何より恐怖の未知谷価格。けれど買ったのはいうまでもない。2010/01/22
ユカ
2
最後のほう、飽きてしまった。たぶん半分削ったほうが面白いと思う。新聞連載だから?大学生の青春の話。登場人物が個性があって覚えやすかった。強引なお見合いおばさん、最近いないなぁ。今の時代でよかった…2021/05/29