内容説明
昭和初期の大不況を描くモダニスト映画監督小津安二郎。やがて「新しき家長」として戦場に向かった彼は、敗戦を境に家長の座を降り、自ら体験した時代の記憶を俳句のような映画に刻み込んだ。軽みと乾いた抒情をたたえたホームドラマに刻印された、大正モダニズム、愛と性、解体する家族、戦争の記憶…。寺田寅彦、谷崎潤一郎、志賀直哉、六代目菊五郎、山中貞雄らの影響や交流を検証しながら、小津が映画に描き続けたものを通して昭和という時代のポートレイトを浮き彫りにする渾身の評論。
目次
1 戦争まで(昭和初期;『出来ごころ』―俺はいゝ氣持でいくんだぜ;大陸への道)
2 焼け跡にて(周吉と紀子;『晩春』―過ぎにし方の恋しきに;『麦秋』―悪に強きは善にもと ほか)
3 繁栄の片隅で(『彼岸花』―青葉茂れる桜井の;『小早川家の秋』―水の流れと人の身は;『秋刀魚の味』―入りつる方も白波の ほか)
著者等紹介
黒田博[クロダヒロシ]
1948年静岡県生まれ。同志社大学経済学部卒。株式会社ポイント(現アダストリア)代表取締役社長を務める。小津安二郎研究第一人者の田中眞澄氏の薫陶を受けて、研究を深める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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