目次
やがて秋茄子へと到る
いまほんとうに都市のうつくしさ
本は本から生まれる
暴力的な世界における春の煮豆
色彩と涙の生活
それではさようなら明烏
季節と歌たち
感情譚
彼女の記憶の中での最良のポップソング
すべての信号を花束と間違える
音楽には絶賛しかない
恐怖と音韻の世界
愛しい人たちよ、それぞれの町に集まり、本を交換しながら暮らしてください
時間
著者等紹介
堂園昌彦[ドウゾノマサヒコ]
1983年11月東京生。2000年短歌を作り始める。2003年「コスモス」「早稲田短歌会」入会。2007年「やがて秋茄子へと到る」三十首で短歌研究新人賞最終候補。2008年「pool」参加。現在、「pool」所属、「ガルマン歌会」運営(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masa@レビューお休み中
81
一目惚れしてしまった一冊。まずはタイトルが気になり、次に装丁の美しさに惹かれ、最後は表紙の紙質にうっとりしてしまった。つまり、本を開く前に、すでにノックダウンしてしまった訳だ。そして頁をめくると…そこには、短歌があった。一頁に一首ずつ、丁寧に文字を連ね、並べられた言葉たち。ハッと情景が目にうかぶ歌や、理由もなく、悲しい気持ちにさせられる歌。普遍的に美しいと思える歌など全195首が収められている。画一的ではなく、丁寧に作られたことがわかる歌集である。だからこそ、著者の想いも、きちんとここにあるのだと思う。2013/12/04
rinakko
10
再読。〈君は君のうつくしい胸にしまわれた機械で駆動する観覧車〉〈眠るときいつも瞳に降りてくる極彩色の雨垂れ、誰か〉〈価値観がひとつに固まりゆくときの揺らいだ猫を僕は見ている〉〈春の船、それからひかり溜め込んでゆっくり出航する夏の船〉〈遠くから見ればあなたの欲望も薔薇のよう抜け出した図書室のよう〉〈君を愛して兎が老いたら手に乗せてあまねく蕩尽に微笑んで〉〈心臓に空が満ちると呟きのすべては夏の頌歌(ほめうた)となる〉〈暗く優しいあなたの知識の泉からあらわれる敬虔なかたつむり〉2021/05/04
いやしの本棚
8
気になりながら買いそびれていた歌集。増刷とのことで、この機会にと手にとりました。一ページに一首という贅沢な構成、余白がたくさんあると、ゆっくり読み進められる。ずいぶん長い間、通勤鞄の中に入っていて、それだけで何となく気分が良くなった。「寝て覚めてこの暁のF・スコット=フィッツジェラルドわずかな光」「生きるならまずは冷たい冬の陽を手のひらに乗せ手を温める」「文字は花。あなたの淡い感情を散らした紙も枯野を祝う」2018/12/27
新谷 華央里
8
現在は手に入りにくい本なので、図書館で書庫から引っ張り出してきてもらって借りて読みました。何か従来の短歌にはない世界観を感じて、それは一言で言えば「村上春樹的」な要素でした。ご本人のインタビュー記事を読んだら、やはり外国文学や詩、音楽、美術などの他ジャンルの芸術にも造詣が深いそうで、そこから受けた影響がわかる人には如実に感じられるのが彼の特徴かなと思います。つかみどころがないんだけど、読むときどきで違った解釈ができるような懐の深い歌集。間違いなく好きな歌集です。2018/09/28
まりこ
7
歌集・詩集は「読み終える」という言葉がそぐわない。本書は1983年生まれの若き歌人の第一歌集。石川美南(歌人)の推薦のことばが本書をぴたりと表している。〈もしも光や涙が自ら言葉を発したならば、こんな歌をうたうだろう。臆面もなくロマンチック。頑固なまでに、詩。ずっと待っていた美しい歌集が、秋の光の中に生み落される〉(港の人HPより) 美しいものは悲しみの中にある、そんな歌集。【手に触れる星屑みんな薔薇にして次々捨てていくんだ秋に】2013/11/06