内容説明
インドネシアの独立と発展に貢献した人物をたたえる最高位の称号、「国家英雄」。1万3千もの島々に、千を超える民族集団を擁する国家として独立してから70年あまり、生まれながらの「インドネシア人」が国民の大多数を占め、民主化と地方分権化の進む今となってもなおインドネシアは、なぜ「英雄」を生み出し続けるのか。国民創設期に誕生した国家英雄制度は、国民統合に向けて変容を重ね、高度に体系化されてきた。その歴史と認定された英雄、認定をめざす地方や民族集団の運動に光を当てる。
目次
序 英雄大国インドネシア
1 未完のファミリー・アルバム―東南スラウェシ州の、ふたつの英雄推戴運動
2 新たな英雄が生まれるとき―国家英雄制度と西ティモールの現在
3 民族集団のしがらみを超えて―ランプン州における地域称号制度と、地域社会の課題
4 「創られた英雄」とそのゆくえ―スハルトと一九四九年三月一日の総攻撃
5 偉大なるインドネシアという理想―ムハマッド・ヤミン、タラウィの村からジャワの宮廷まで
6 「歴史をまっすぐに正す」ことを求めて―国家英雄制度をとおした、ある歴史家の挑戦
7 「国家英雄」以前―「祖国」の創出と名づけをめぐって
著者等紹介
山口裕子[ヤマグチヒロコ]
1971年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。北九州市立大学文学部・准教授。社会人類学。インドネシアの東南スラウェシ地方の政治社会状況と歴史語りの変化について研究している。近年では国際労働力移動への関心から、滞日インドネシア人ムスリムの暮らしと日本のハラール産業の調査も行っている
金子正徳[カネコマサノリ]
1972年生まれ。金沢大学大学院社会環境科学研究科修了、博士(文学)。人間文化研究機構総合人間文化研究推進センター・特任助教(2017年4月から)。文化人類学
津田浩司[ツダコウジ]
1976年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・准教授、文化人類学。東南アジア島嶼部(主にインドネシア)の華人社会における文化・宗教・伝統などをめぐる再編過程について、人々の生活に密着した場から研究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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