内容説明
戦争がなければノーベル賞だったと云われる研究成果を次々に出し、がん研究を牽引し続けた。日本文化への深い洞察から国語問題に取り組み、また医師としての責任感から医療問題に積極的に関与した。卓説した組織者であり、人情の機微に通じた教育者であった。どれ程多くのものを我々は吉田富三に負っているか、どれ程多くの人間が、吉田富三のおかげで、豊かな気持ちで生きていくことができたか、計り知れない。類い希な資質の吉田富三が大成したその背景に、豊かな日本の自然と人と文化がある。吉田富三に学び、吉田富三に結晶した日本の文化を継承し発展させることが、21世紀を生きる我々にとって必要である。
目次
吉田富三小伝
吉田富三生誕百年記念―日本癌学会シンポジウムから(二十世紀の日本の発がん研究;吉田富三先生―がん化学療法の曙;吉田富三先生とがん研究体制 ほか)
吉田先生を偲ぶエッセイから(戦火の中の吉田肉腫;自分には厳しく、他人には寛大にな;子供をダマすわけにゆかんよ ほか)
吉田先生と国語問題
医療問題に関する吉田メモ(再録)
吉田富三記念館
著者等紹介
北川知行[キタガワトモユキ]
昭和38年東京大学医学部卒業、昭和43年東京大学医学部助手(病理学)。昭和45年より癌研究会癌研究所研究員、病理部長を経て平成5年癌研究会癌研究所所長。日本癌学会理事・会長、日本病理学会理事、日本学術会議癌専門委員、日米がん研究協力事業委員会委員、文部省がん特定研究組織総合がん代表、国際対癌連合(UICC)理事、等を務めた。日本癌学会長与賞受賞。「さしたる苦痛もなく、あたかも天寿を全うしたように人を死に導く高齢者のがん」と定義する「天寿がん」を提唱
樋野興夫[ヒノオキオ]
昭和54年愛媛大学医学部卒業。癌研・病理部、米国アインシュタイン医科大学肝臓研究センター、米国フォックスチェース癌センター、癌研・実験病理部・部長を経て順天堂大学医学部教授。信州大学加齢適応センター、日本大学医学部、明治薬科大学連携大学院、近畿大学大学院医学科客員教授。日本病理学会理事、日本癌学会理事。日本癌学会奨励賞(一九八六年)、日本実験動物学会賞(安東・田島賞)(二〇〇一年)、癌研究会学術賞(二〇〇二年)、高松宮妃癌研究基金学術賞(二〇〇三年)、新渡戸・南原賞(二〇〇四年)。ヒト肝癌におけるB型肝炎ウイルスによる染色体転座の発見、遺伝性腎癌ラット(Ekerラット、Nihonラット)のそれぞれの病因遺伝子単離・同定に成功
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