内容説明
かしわばやしの、その前で、変や画かきにえり首をつかまれた清作は、「赤いしゃっぽのカンカラカンのカアン。」とどなりました。するとその画かきは、まるで咆えるような声で笑いだしていいました。「どうです、すこは林のなかをあるこうじゃありませんか。」―柏の木大王やふくろうの大将、素敵な賞品メタルも並び、はやしの中でくりひろげられる、おかしく楽しく不思議なひと時。
著者等紹介
中野真典[ナカノマサノリ]
1975年、兵庫県小野市生まれ。画家、絵本作家。大阪芸術大学卒業。在学中より障害児の学童保育で働き、卒業後保育士となる。子どもたちと過ごした時間、シベリア鉄道でのチェコへの旅、ダンサーをはじめとした様々な表現者と寝食をともにした若い日々の経験をベースに、目の前のもの、そこにある現象を体を通して描く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あおい
13
不思議な画かきに誘われて森の奥に入って行った清作。そこでは木々がそれぞれ自作の歌を披露し画かきが賞品のメダルを与えていて…柏の木の大王と清作のコントのようなやりとりが笑える。月夜の晩の幻想的なお話。2024/03/06
クラムボン
12
ミキハウスの「宮沢賢治の絵本」。きかん気の強い…少年のような…きこりの清作が、赤いしゃっぽの絵描きに誘われて森の中へ導かれる。そこは柏の木大王が君臨するカシワ林だった。大王は「その人はよしなされ。前科九十八犯じゃぞ。」と絵描きに言う。…切株を指していたのだ。しかし東の空に丸い月が昇ると若い柏の木たちは叫び大王も歌い出す。そこからは清作も絵描きも交えての饗宴、是ぞ!賢治の世界が始まる。風変わりな歌合戦とフクロウの大乱舞。中野真典の絵は、夜の森の怪しさをダークに、しかしコミカルに描いて魅力たっぷりだ。2024/06/30
イカまりこ
10
不思議な話。柏の木って見たことあるかな?柏餅の葉っぱの木ってこと?木たちの態度はかなり腹立たしいけど、それに負けない清作の反抗的な態度がスカッとする。偉そうな柏の木の大将やふくろうの大将もお月様にはかなわない。月が隠れちゃったら不思議な宴会も終了。清作だけ動けるのがクスッと笑えた。2024/01/31
takakomama
8
夕暮れに突然聞こえてきた変な声。清作は絵描きに連れられて柏ばやしに行き、柏の木々や大王と歌合戦。賞品はメダル。ふくろうたちもやってきました。柏の木々は歌ったり、踊ったり・・・ 霧が降りてきて歌合戦はおしまい。ファンタジー? 不思議な話。2023/11/30
のんたろう
4
日暮れに突如現れた画かきにいざなわれ、柏林に入る清作。けれども柏の木たちはどうも清作を歓迎していない様子。柏の木大王は木を伐る清作を前科者と呼び、清作は山主に酒を買っていると己の真っ当さを主張する。すると大王は自分に酒をよこさないことを非難するが清作はそんないわれはないと譲らない。画かきのとりなしで歌合戦?が始まり……という不思議な物語。そういえば勝手に土地の所有権を主張したり、その人間に貢物をしたりするのもおかしな話だな。コラージュの絵もあいまって自分も不思議な柏林に迷い込んだような気分に。2024/05/06