内容説明
「ベゴ」という名前は、稜のある石どもがつけた名前だ。石どもは、退屈な日には、みんなでベゴ石を、からかって遊んでいた。石どもばかりではない。くうんくうんと飛んできた蚊までが、「どうも、この野原には、むだなものが沢山あっていかんな。たとえば、このベゴ石のようなものだ。ベゴ石のごときは、何のやくにもたたない。」と馬鹿にするのだ。―ところが、ある日のこと…。
著者等紹介
田中清代[タナカキヨ]
1972年、神奈川県生まれ。多摩美術大学絵画科卒業。油絵と版画を学ぶ。1995年ボローニャ国際絵本原画展ユニセフ賞受賞。1996年同展入選。1997年『みずたまのチワワ』(井上荒野/文 福音館書店)で絵本作家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Aya Murakami
111
図書館本 フォルムも性格も真ん丸な火山弾が周りの悪口に耐えきった結果、予想外の結末を迎える絵本。 火山弾の悪口を言っている苔やら草花やらは何やら現代社会のチャラ男を連想させます。ゴテゴテ着飾りながらも東京帝国大学に運ばれていく火山弾を見る彼ら(彼女ら?)は何やらうらやましそうに見ているような気がしました。火山弾は「これから私が行くところはここほど賑やかな場所ではないですよ」と警告していますが、世のチャラ男は裏口からでも強引に入り込もうとするのですよね…。2020/01/07
モリー
73
雨ニモマケズ…の詩に込められた宮沢賢治の想いの一端が伝わってくるように私には感じられました。人は自分に日が当たらず、不満に感じたとき、自分より惨めに見えるものをバカにしがちです。そして、皆がバカにする者に対して初めは同情していた者も、他の者たちに同調して異質な誰かをバカにするようになるのです。バカにされば、普通ならば、いじけるか、怒るかどちらかではないでしょうか。気のいい火山弾は違います。けっして怒らず、いつも静かにわらっているのです。置かれた場所で自分に出来ることをする生き方を理想と考えたのでしょうか。2022/08/14
♪みどりpiyopiyo♪
45
未読の宮沢賢治の童話を読んでみよう週間♪ ■おっとり どっしり ほんとに気のいい 火山弾のおしゃべりに にっこり。かしましい周囲の小物感も まああるよね。社会のリアルをよく表しているなぁ。…って読んでいたら、最後 そーなの?! 大筋は予想通りなんだけど、その事の意味付けと 寓話然と書かれていることが意外で、その時代の価値観を感じました。(絵 2010年)(→続2020/11/20
ヒラP@ehon.gohon
32
1つの火山石と周辺のたくさんの火山石との力関係をこの絵本に見ました。 特別なものは嘲りの対象になるのでしょうか。そのミクロ的な見方を、宇宙を背景としたマクロ的な視野に置き換えてみたらどうだという、火山弾と苔たちのやり取りが印象的です。 からかっていた苔たちは取り払われるだけの存在でしたから。「私共は、みんな、自分でできることをしなければなりません。」という名セリフと、連れられていく火山弾としっくりしないのですが、あるがままを受け入れる自然体も、自分でできることなのでしょうか。 2021/04/21
gtn
27
ベゴのような人に「ワタシハナリタイ」との賢治の声が聞こえてくるようだ。しかし、毀誉褒貶を顧みない人間になど成れないことも分かっていたはず。2021/05/13