出版社内容情報
なぜエバはあばら骨から造られたのか??
禁断の木の実はリンゴではない!?
旧約聖書本文の記述にないユダヤ人に伝わる伝説、伝承(アガダー)を単行本化。ユダヤの賢者たちによるイマジネーションあふれる物語は大変面白い。一見単純にみえるお話にも、深い意味が隠されている。
ユダヤ人がどのように聖書を読んできたのか、その自由で独創的な発想の原点がここにある。
上巻では「天地創造」から「出エジプト」までを取り扱っている。アダムとエバの物語や、ノアの洪水、アブラハム、十戒、紅海の奇跡、モーセの死等にまつわるユダヤの逸話が満載。
編訳者まえがき
第1章 天地創造
世界の創造/天と地とどちらが先/光と世界/水/植物/月
生き物の世界/人間/天のものと地のものとが混じって
安息日のちょうど前に万物が創造された/エバ/蛇
知恵の木は何だったのか/カインとアベル/洪水ノアの人格について
方舟づくり/オリーブの葉の教訓/方舟の中で/飲酒の危険/バベルの塔
第2章 族長たち
アブラハム/ソドムとゴモラ/イサク/イサクをささげる/リベカ
ヤコブ/ヤコブの流浪/ヤコブ、エサウと天使たち
第3章 ヨセフの物語
エジプトでのヨセフ/ヨセフ、ファラオの前に出る
エジプトでのヨセフの兄弟たち/ヨセフが身を明かす/ヤコブの死
第4章 出エジプトの物語
エジプトでの奴隷状態/エジプトの王の命令/二人の助産婦/モーセ
ミデアンの地におけるモーセ/イスラエルは神に向かって叫ぶ
燃える柴とモーセ/なぜ神は柴の中に現れたのか/モーセ、エジプトに戻る
十の災い/贖い/紅海を分ける
第5章 荒野におけるイスラエルの民
マナ/トーラーの授与/金の子牛/神に嘆願するモーセ/幕屋建設とその祭具
カナンの地の偵察/コラの反乱/メリバの水/アロン/アロンの死/バラムの話
荒野でいかに過ごしたか/旅の終わり/モーセの預言/エルダドとメダド
モーセの死/モーセの埋葬
編訳者まえがき
まず、本書のタイトルについてご説明しよう。
ここで賢者というのは、古代のユダヤ人の賢者たちのことである。
二千年前から千六百年前頃までのユダヤ人たちが、現実の生活の中でいかに意義ある人生を生きるかを聖書から学んでいった教訓、格言集と言ったらわかりやすい。
聖書とは、ユダヤ教の聖典、いわゆる「旧約聖書」のことである。キリスト教でも、ユダヤ人の聖書を用いているので、キリスト教独自の聖典と区別して通常そう呼ばれるが、もちろんユダヤ人には旧新の区別はない。
ユダヤ人の歴史と共に発展した彼らの宗教、ユダヤ教の教典である「聖書」は、三千年前から徐々に作られていって、紀元後二世紀になって完成したものである。
長い時の積み重ねの中で生まれた聖書を読み理解することは、時代が経つと共に、容易でなくなり、解説と説明をしてくれる専門家が必要になってくるのは自然だった。
書かれた文字の聖書以外に、口伝えで伝えられた説明や教え、戒律が数々と生まれていく。そして、それを民衆に教えてくれる人たちが、ユダヤの歴史に登場してきた。彼らが、賢者とかラビとか呼ばれた教師たちである。
簡単に言うと、二千年前のイエス・キリストの時代前後からのことである。後に、ローマによってユダヤ人の国が滅ぼされてからは、ラビたちは民族の指導者の役割をも果たした。
それ以来、今日に至る二千年間のユダヤ人の歴史は、大変困難に満ちていた。
その間、ユダヤ人は、聖書を、ただ単に古い固定した教典として学ぶだけでなく、それを自分たちの生きる時代の問題に当てはめて、新たな解釈をし、新しい意味を探り、生きていく力と知恵を求めた。聖書は、いつでも人間と対話してくれる神の声と信じていた。
賢者が弟子たちや民衆に聖書を解き明かすときに語った説教、それをユダヤ教では「ミドラッシュ」と呼んでいる。
本書を読むとき、読みにくさを覚えるかもしれない。それは、古代の人々の考え方が現代人の私たちと随分、違っていたというのも一つの理由であろう。
時代が異なれば、直面する問題も異なる。聖書について、固定的な解釈だけにしがみついていたならば、おそらくユダヤ人は生き残れなかったにちがいない。自由に自在に発想して教訓を得て、教えたミドラッシュという文学形式は大変面白く、重要なのである。
単純な話にも、深い意味が隠されている。話の背後に、歴史がある。
現代に至るまで、ユダヤ人は様々な、独創的な思想や考え方を生み出してきたのは、よく知られている。ユダヤ人の発想の原点は、まさにここにあると言ってもよい。
本書は、ユダヤ賢者が語った「聖書」にまつわるミドラッシュ(つまり、説話、説教、注釈)のうちで、現代人にも通じる、最も重要なものを集めたものである。本書は、聖書に関心を持つ人、もっと深く理解した人、聖書のおもしろさを知りたい人に、実に新鮮な視点を与えてくれると信じる。
さて、初めに、ユダヤ人の間では口伝えの教えが聖書と同様に大事にされたと述べた。参考のために簡単にこれに触れておきたい。
口伝の教えは文字どおり師から弟子に口頭で伝えられ、暗誦され、伝承されていったのだが、それらの伝承は紀元二世紀頃から文字に書き残されることになった。その教えのことを「口く伝でん律法」と言われるが、中心的なものが「タルムード」と呼ばれる教典である。それ以外にも多くの文献が残されていたが、そのおかげで、ユダヤ人は世代から世代に彼らの伝統を伝えて残すことができた。
タルムードの中には、賢者たちの語り伝えた、いろいろのミドラッシュが残されている。また、ミドラッシュだけを集めた、独立した書物もある。
本書の元となったのは、イスラエルの詩人ビアリクと、出版人ラヴニツキーによって、タルムードやミドラッシュの本から収集・編集されたヘブライ語の『セフェル・ハアガダー(伝説の本)』(一九一〇年刊)である。
その後、改訂版や各国語版が出されたが、原文を元に英語版(一九八八年刊)を参照し、日本人には理解しがたい部分や不必要と思われる素材は割愛した。なぜなら、理解するのには十分な予備知識が必要であったり、ユダヤ教の神学・教理に関連するものがあったからである。
最後に、もう一つ、本書にしばしば出てくる、ユダヤ教で最も大事な言葉「トーラー」を覚えていただきたい。もともとトーラーは「教え」という意味で、聖書の最初の五巻「創世記」「出エジプト記」「レビ記」「民数記」「申命記」を指す(「律法」と訳される邦訳は、誤解を呼びやすい)。次に、聖書全体の教えを指す言葉にも使われ、さらに賢者の教え全体を含めても広く使われる。
本書には、いろいろな賢者の名が登場するが、何人かを除いて、あえて一人一人の人物紹介を省いた。日本の読者には、彼らがだれかは気にしないで結構だと思われる。現代のユダヤ人においても、専門家以外は、物語った賢者の名を忘れても、その言った語録はよく知られているからである。
日本語版として、各本文のまえがきと脚注を編集部において付け加えた。とは言え、編訳者の注には限界があるので、ぜひ日本語の聖書を手元において本書を読むことをおすすめする。
本書が、ユダヤ賢者の文学という世界の入門の役割となり、旧約聖書への親しみを増す縁となれば、大変に幸いである。
二〇〇一年十二月五日
ミルトス編集部
内容説明
なぜエバはあばら骨から造られたのか?禁断の木の実はリンゴではない!?古代のユダヤ賢者によるイマジネーションあふれる聖書解釈―ミドラッシュ―は、一見単純にみえるが、深い意味が隠されている。旧約聖書の記述にない、ユダヤ人に伝わる伝説を紹介。上巻は「天地創造」から「出エジプト記」まで。
目次
第1章 天地創造(世界の創造;天と地とどちらが先 ほか)
第2章 族長たち(アブラハム;ソドムとゴモラ ほか)
第3章 ヨセフの物語(エジプトでのヨセフ;ヨセフ、ファラオの前に出る ほか)
第4章 出エジプトの物語(エジプトでの奴隷状態;エジプトの王の命令 ほか)
第5章 荒野におけるイスラエルの民(マナ;トーラーの授与 ほか)
著者等紹介
ビアリク,ハイム・ナフマン[ビアリク,ハイムナフマン][Bialik,Hayyim Nahman]
1873年ロシア生まれ。「ユダヤ国民詩人」と呼ばれ、詩、随筆、小説などによってユダヤ民族精神の鼓舞に努めた。主にオデッサやベルリンで活動を続けたが、1924年にパレスチナに移住。1934年没
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