内容説明
生殖医療は海を越えて。身体の商取引という側面とケアワークという側面が一つの母胎に顕在する代理出産。国境を越えたメディカル・ツーリズムの一大拠点となったインドの現実を、社会空間と現場レベルから見つめる。
目次
1 インド社会と生殖医療技術(多様性の国、インド;「試験管ベビー」から代理出産へ;メディカル・ツーリズムと社会問題;ART規制法案の特徴)
2 代理出産を支える要因(経済格差と身体部品の売買;スティグマとしての不妊;生殖医療による身体介入の歴史;ヴェーダ科学と神話)
3 代理出産のフィールド(代理出産のプロセス;代理母になる女性たち;代理出産を正当化する論理;アクター間の関係性)
著者等紹介
松尾瑞穂[マツオミズホ]
1976年、名古屋市生まれ。総合研究大学院大学文化科学研究科比較文化学専攻博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、新潟国際情報大学情報文化学部准教授。専門は、文化人類学、南アジア地域研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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外国からの利用者も多い、インドの代理出産のフィールド調査報告。代理出産は、搾取や人身売買という観点で問題視されているが、その他にもインド特有の事情がわかる。例えば①インド社会では不妊の女性は忌避の対象となるため、差別を逃れるため代理出産を活用したいという、インド社会内での需要がある。代理母にとっては、生殖能力の乏しい女性へ施しという意味もある②キリスト教やイスラム教とは異なり、ヒンズー教には生殖医療を忌避する考えは無い。ヒンズー教の考えは、イスラムと対比されるものとして作られてきたという歴史的経緯がある。2020/08/30