目次
第1部 “太宰治”と戦後の十五年(第一次太宰ブーム―一九四八年;戦後の編集者たち;戦後の若者たち;第二次太宰ブーム―一九五五年)
第2部 『太宰治全集』の成立(八雲書店版『太宰治全集』;筑摩書房版『太宰治全集』;検閲と本文)
第3部 高度経済成長のなかで(“太宰治”と読者たち;第三次太宰ブーム―一九六七年前後;「からっぽ」な心をかかえて)
終章 その後の“太宰治”
著者等紹介
滝口明祥[タキグチアキヒロ]
1980年広島県呉市生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(日本語日本文学)。早稲田大学国文学会(窪田空穂)賞受賞。学習院大学助教を経て現在、大東文化大学専任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鉄之助
224
生前の太宰治は”マイナー作家”だった! 最高に売れた『斜陽』でさえ3~4万部。その太宰が、なぜ「文豪」となりえたのか? この本では 大きな3つの「太宰ブーム」を紐解きながら当時の世相、日本の文学状況も俯瞰して説明。実にわかりやすく腑に落ちる太宰解説本だった。中でも、奥野健夫の「潜在二人称的な説話体」説は秀逸。太宰独特の文体のため、「読者は、読みはじめれば嫌でも小説の中に入り込まされる」という指摘に、思わずうなずいてしまった。今年1番のお薦め本だった。 → 続く2020/04/22
古古古古古米そっくりおじさん・寺
63
これは面白い!何でもっと読まれていないのか?。本書はどういう経緯で太宰治が現在のような人気文豪扱いされるようになったかを記した太宰治受容史。私は坂口安吾より太宰治の方が流行作家だったように思っていたが、人気が出たのは戦後の『斜陽』ぐらいからで(その頃、安吾は『堕落論』『白痴』で既に流行作家)、戦前は文学青年に熱狂的支持者がいたぐらいの存在だと本書で初めて知った。近年の没後50年、生誕100年、そしてそれ以後にも触れられており、出版文化の変遷も伺えて良い。全集がドル箱の時代があったのだよなあ……お薦めです。2020/02/18
ヒロミ
62
太宰の死後から現代までの太宰文学の受容のされ方を追った論文。ちょっと大風呂敷を広げすぎの感は否めないが、第一次太宰ブームでのスキャンダラスな無頼派作家という作家イメージ、太宰治全集の充実してきた第二次ブーム、第三次ブームは高度経済成長期における学生運動の学生たちによる左翼的な受容、現代における「太宰治は暗い」というイメージの脱却からラノベ的な受容のされ方まで。充実した論考であった。しかし死後も毎年20万部売れ続けているという太宰。その文学の根底には普遍的な苦悩や喜びが描かれているからかもしれない。2016/06/17
kokada_jnet
24
太宰治全集というものは、都合13回。筑摩書房だけで11回も出ているということに驚いた。その人気と、作品数のほどよさ故か。小林信彦『小説世界のロビンソン』での太宰論からの引用も多々あり。『人間失格』を題材にした、女子高校生の読書感想文の引用も秀逸。脱線的に論じられる、「第三の新人」論も、非常に面白かった。2020/03/21
陰翳rising sun
13
太宰治×久米田なので即決で購入。太宰の人気が本の発行部数と時代背景から考察され、世間に受容された過程がわかる。意外だったのは生前は決して売れっ子作家ではなかったこと。愛人との情死というスキャンダルや、親交のあった編集者、熱烈な愛読者などによってブームが起こされていた。この筆者の年齢が比較的若いお陰か、昨今の漫画やライトノベル、推理小説などへの影響にも触れている。私が太宰を意識したのは、集英社文庫でデスノートの小畑健が画いた「人間失格」だったので非常に納得した。太宰の文体は「潜在二人称的な説話体」とのこと。2020/09/06