内容説明
大学の入試や卒業要件にTOEFL等の外部検定試験を導入する案が、自民党教育再生実行本部や政府の教育再生実行会議によって提案された。しかし、もしそれが現実となれば、学校英語教育が破綻するのは火を見るよりも明らか。危機感を持った4人が、反論と逆提案に立ち上がった…。小学校英語教科化の問題点、白熱した座談会、関連年表なども収録。
目次
「大学入試にTOEFL等」という人災から子どもを守るために
もう一度英語教育の原点に立ち返る
英語教育政策はなぜ間違うのか―認知科学・学習科学の視点から
英語コミュニケーション能力は測れるか
座談会「英語教育、迫り来る破綻」
著者等紹介
大津由紀雄[オオツユキオ]
明海大学外国語学部教授、慶應義塾大学名誉教授。専門分野、言語の認知科学
江利川春雄[エリカワハルオ]
和歌山大学教育学部教授。専門分野、英語教育学、英語教育政策史
斎藤兆史[サイトウヨシフミ]
東京大学大学院教育学研究科教授。専門分野、英語文体論、英語教育、英学
鳥飼玖美子[トリカイクミコ]
立教大学特任教授(大阪院異文化コミュニケーション研究科)、国立国語研究所客員教授。専門分野、英語教育論、言語コミュニケーション論、通訳翻訳学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
35
英検2級より簡単なセンター試験で高校生の平均点は約6割(7頁)。●英語ができればグローバル人材か(9頁~)。これは短絡的と批判されている。中高の教科名は外国語だから、英語以外の外国語を学ぶ権利も保障されていることに意義があるという。確かに。真の国際化のために、英語一辺倒主義を改め、アジア諸国を含む世界の多様な言語文化に対応できる(10頁)人こそグローバル人材というのは納得できる。学校教育では、学びの楽しさと学び方を教え、自助努力で使えるレベルにすること(12頁)。2016/07/07
Riopapa
11
日本人は誰でもが英語教育評論家になってしまう。必要になる時に備えて基本をしっかりやっておいて、必要になったらいつでも安価に学び直しができる環境があればいいのだと思う。2015/07/18
Nobu A
8
2013年初版、翌年4刷。英語教育者4名の自民党主導の大学入試にTOEFL等の外部試験の導入案に対する反論。斎藤先生を始め、全著者の著書それぞれ数冊ずつ読了済み。4本の論文収録。大抵1、2本は愚作(失礼!)が混じっているものだが、全て秀逸。ただ、大津先生は相変わらずの大津節が轟く。大御所の努力も虚しく、英語教育の迷走が今でも続く。問題は財政界が幅を利かせ政策に影響を持ち、検証なく次々と教育政策が行われること。何故国語はなく英語だけ4技能を入試で問うのか等、示唆に富む。一点だけ。巻末の座談会はややお喋り会。2021/09/10
Hiroh
8
入試・卒業要件にTOEFLを導入する。それは体育の授業だけで国体を目指せというのと同じ無茶。ごく一部のエリートだけを見て、ついて行けない者は無視するというのはブラック企業の論理。 本当にそうだと思う。日本で教育を受ける限り、教養も知識も母語の上にしか築かれない。母語で考えられない事を外国語で考え、発することはできない。 この20年の「コミュニケーション重視」の教育で日本人の英語力は著しく落ちている。その検証もないままにどんどん思いつきの「抜本的改革」を重ねている。2014/06/28
RmB
8
教育の目的とはなんだろう?企業の意向に沿った人間を育てることだろうか…? 就職にはTOEIC、大学入試にはTOEFL、英語の試験は全部米国製になってしまうのでしょうか?2013/08/05