内容説明
体は動かず、自力で息もできない。死にたいと思ったことはありますか?看護学生からの問いにALS患者が出した答えとは…。
目次
第1章 日常―ALS人生、けっこう楽しい、忙しい(一日のはじまり;ALS患者として生きる ほか)
第2章 告知―壊れていく世界(右腕が動かない;小さな部屋での告知 ほか)
第3章 再生―役割を取りもどす(必要な手をかきあつめて;命綱となるのは文字盤と視線 ほか)
第4章 生きつづける―ALS患者の選択肢(進行よ、止まれ!;どんなお父さんでも生きてもらう ほか)
第5章 つながる―かけがえのない「普通」(次世代へ;一〇年の学校講演 ほか)
著者等紹介
玉居子泰子[タマイコヤスコ]
フリーライター。1979年生まれ。東京外国語大学卒業後、早川書房に入社。翻訳書籍編集を経て、フリーの編集者、ライターに。育児雑誌編集に携わり、妊娠・出産、子育て、仕事、福祉などをテーマに書籍・雑誌・webに執筆する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しいたけ
98
ALS患者の読書のお手伝いをするボランティアをしている。その人の長い生活の中のほんのひと時しか関わりのない私が僭越ではあるが、此度のALS患者嘱託殺人事件に憤りを覚えた。逮捕された医師はこの患者に寄り添ってきた医師ではない。また多額な報酬を受け取っている。だからこの本を読み感動した「ALSであっても彩りのある世界を生きる」ということについての議論にはならない。「生きつづけることに価値がある」という佐々木夫妻の言葉をぶつけるにも次元が違う。それでもこんなレビューを書くほど、私は腹を立てている。2020/07/30
lily
6
若くしてALSを発症した佐々木公一氏と彼を介助する人々のノンフィクション。日本にいるALS患者の7割は、家族に迷惑がかかることなどを理由に呼吸器を付けてまで生きることを希望しない。医者にも、社会にもそうした雰囲気が蔓延するなか、生きることそのものに意味を見出す氏の言葉は重く響く。確かに氏の周りには(実際には御苦労も多いだろうが)白々しくない、ほんものの「やさしさの連鎖」がある。その生き方を否定することがどうしてできるだろう。生産性だけのモノクロな世界から多様な視点を持つことで、世界はまた彩りを取りもどす。2020/10/16