感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
20
ドイツロマン派の作家ノヴァーリスの2つの中編を収録。「アトランティス物語」は、伝説の土地アトランティスが、生き生きとして詩的な筆致で描かれています。詩と音楽が主題になっており、ロマン派らしい物語。「エロスとファーベル」は瑞々しくて、透き通るような美しさのある物語です。雰囲気が宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に似ており、読んでいるとぐっと物語の中に引き込まれます。愛と美の神であるエロスの描き方に深みがあります。表面的な美ではなく、死やこの世の醜いものを意識しながら存在しているという描き方に作者の哲学を感じました。2024/07/01