内容説明
電話こそ知恵の根源であり、電話コードこそ人間の連帯の具現である―「電話」を通し、現在の閉塞感を打破し、絶対的なコミニュケーションを実現しようと企てる“電話男”たち。到来したインターネット時代を早々と予見し、その果てにある光と暗黒を斬新な文体と秀れた想像力で描き出した不朽の名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おすし
23
電話男に話を聞いてもらいたい人々と、電話がかかってくるのを待ちわびている電話男。電話男を読メとかSNSの発信者、電話することを「いいね」とかコメントを付ける行為とするとイマドキに通じるものがあるのかもしんない。中毒性があったり、教育に悪いとか反対派が出て来たり、電話男を極めすぎると破滅願望にとりつかれるっぽい。しかし独特のポエミーさの中で冗談半分に語られる哲学的考察や独自の宗教が編み出される話の展開のあたり、シュールすぎて理解不能w。なんだけど、なんだか後引く読後感の作品でした。2022/12/26
きさき
14
★★★★☆:めっちゃ面白い!もっと評価されていい作品。是非読んで欲しい。文学好きな人は絶対好きだと思う。Herman Melvilleみたい。2020/03/10
乙郎さん
7
何はおいても「電話男」。これは今こそ読まれる作品。コミュニケーションを純化したような存在の電話男。これは現代におけるインターネットの登場を予言している!なんて100万回言われてきたかもしれないけど、20年前の小説とは思えないくらい先鋭的だった。ブログのような文体も含めて。「迷宮生活」では脳内こそが不可解なものと捉えていて興味深い。北野武の映画を連想した。2009/02/21
2兵
3
ポストモダン文学を掘り下げてみたくて、ウィキペディアの項目に紹介されていたこちらを読了。一九八〇年代にインターネット社会を予見した小説として知られているようだが、たしかに電話男とそれにハマる人々の構図は、二〇〇〇年代の匿名掲示板やチャットの盛況ぶりを彷彿とさせる。同時に、物質主義に染まりがちな現代人の孤独や淋しさ、そして何よりも絶望感を、簡潔な文体と構造で描いた作品という印象。前編となる表題作の、宗教まで茶化す辺りは、筒井康隆作品的でもあり、少々嫌な気分にさせられたが、後編がハッピーエンドに終わったので2022/09/28
peeping hole
3
JRみたいな話かと思いきやテレクラ→インターネット→斎藤さんみたいな話だった。80年代にこれはとにかくすごい。構造だけの小説なんだけどバーセルミとか高橋源一郎的な引用と節の切り方が素敵。「知恵は自分のため、というより多くは他人のために生み出されるものなのです。だってそうでしょう。自分だけのためなら何も言語化する必要はない筈です。知恵は、言語化の時点でコミュニケーションが念頭に置かれているのです。」2020/12/23