内容説明
1928~1971年ロンドン激動の時代を懸命に生きたふたりの日々。「スノーマン」の作者が愛情を込めて描いた両親の実話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nobuko Hashimoto
34
『スノーマン』『風が吹くとき』のブリッグズが両親の人生を描いた本。絵に老いを感じるが、イギリスの1928年から71年のごく普通の労働者家庭の生活が丹念に描き込まれていて興味深い。DIYで家や庭を快適にし、お茶とお菓子を愛する日常。WW2時には空襲に遭ったり、子を田舎に疎開させたりするが、同時期の東欧に比べるとイギリスはやはり相対的に余裕があるように見える。夫は労働党、妻は保守党を支持し、時々の政策や景気を受けて、お互い嫌味を言い合ったりもするが、仲良く同じ家で暮らし続ける。最晩年の様子にはウルっとくる。2020/03/13
シュシュ
21
著者の両親の若い頃から老いるまでの物語。コマ割りの漫画形式の本。時代背景もよく描かれていて、丁寧な絵がとてもよかった。2019/11/18
カタコッタ
15
大人になってから絵本を読み直したきっかけになったのが、著者の『さむがりやのサンタ』でした。自分の両親の生涯を絵本に出来るほど家族について伝え聞いていた事、世界の消して明るいだけでない状況、しっかり伝わってきました。41年住んだ家を愛おしみながら住み続け、インテリアや庭の手入れをする英国人の慎み深い生活。幼い時種を植えた梨の木がすっかり大木になっている程の年月は気持ちを次に進めるキッカケにはなったのだろう。思い出と共に記録しなければならない現実を描かねばならない気持ちにさせたのだと勝手ながら思っている。2019/10/20
ツキノ
13
(E-47)レイモンド・ブリッグスが両親の出会いから死までを描くコミック。色合いも丁寧なタッチも、夫婦のユーモアあふれる会話も沁みる。激動の時代を生き、次第に老いていく。レイモンド自身も登場し、大人になってからも会うたび「はい、クシ」と差し出す母。最初は怒っていたレイモンドも最後は「ありがとう」。映画もぜひ観てみたい。ポール・マッカートニーによるエンディング曲とのこと。2020/02/20
yoneyama
11
1900年くらいに生まれたイギリスの下の方の階級の二人の一生が、細かいところを盛り込んで進んでいく。時代と世代ってこうした些細な物事を盛り込まなくては本当のところわからない。よそ行きではない本音もつぶやく。新聞を読み、ラジオの情報を聞き、社会主義も期待し、伝統思考にもとらわれる。苦労した世代だから。些細な会話がリアルで面白い。最後になって、この小さな坊やが筆者だったのかと気づく。この世代の文化ギャップは日英同じだと思うが、若い頃からの時間軸を見ると、そうだよなあと納得行く。両親の一生をこんな形で残せたら。2021/12/18