出版社内容情報
■江戸・東京400年の歴史から見た東京。
■今こそ、新しい「東京」づくりを、後藤新平に学べ。
現在の日本の首都、「東京」。この都市は今、さまざまな問題を抱えている。
その一番の問題は、何よりも「どのような都市にするか」というビジョンがないことである。百年前、唯一、東京という都市のビジョンを作った男がいる。後藤新平(1857-1929)である。彼は1920年12月から23年4月まで東京市長をつとめ、総合的な視点から「東京」の都市計画を提示した。それは東京を、世界の中の日本という意識下に考えられたものであって、世界の都市のモデルになりうるものであった。
後藤新平は、台湾経営や満鉄経営においてもそうであったように、必ず「生物学的原理」にもとづいて、街づくり、国づくりを考えてきた。その「生物学的原理」の根底にあるのが「自治」であり、「自治は人間の本能である」という思想である。
東京をどのような町(都市)にするのかを考えるとき、必ず「自治的自覚」をもって考えられなければならない。すなわち、「どんな街にしてもらいたいか」ではなく「どんな街にしたいか」である。東京の都市ビジョンは、行政からではなく、都民から出てこなければならない。大震災後、後藤が建設しようとした首都東京は、現在も、新しい東京づくりの軸になりうるし、他の諸都市のモデルにもなるはずである。
そして東京の問題は、かつて江戸と呼ばれていた時代にまで遡って考えなければならない。首都東京の歴史は140年余であるが、江戸に幕府が開かれて400年余であり、当時の江戸は、世界のいかなる都市よりも清潔で整った都市であった。今なお、江戸という都市、文化に学ぶべきものは多い。(後藤新平『江戸の自治制』)
2020年、再び東京オリンピックが開かれる。新国立競技場の建築計画も二転三転している。ビジョンを欠いたまま進んでいるのだ。本特集は、今後の東京の都市計画を根底的に考え直すことを願って企画した。



