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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
40
ポー作品などの挿画で寂しげな夢のようにユーモラスな作風で有名なルドンについての美術評論。持ち前の病で母から遠ざけられた孤独、評論家としての生き方、詩人たちへの影響力、ポー作品をなぜか所有していないこと、ユイスマンスとの決別などルドンの生涯と人間との関わりとその芸術を丁寧に掬い上げています。他者から自身の批評へと移っていったのが自分の表現したかった本意を伝える為。しかし、彼の絵が今も惹き付けてならないのはそこにある無限の解釈が可能な物語性と寓意に満ちているからだと思います。2013/06/26
ラウリスタ~
9
これは大著。ものすごい分量に圧倒されるも、実は膨大な注と付録があるから、実際の本文は400ページちょっと。それでも十分多い。19世紀末に、文学者による美術批評によって売れたルドンだが、後に文学と距離をとるようになる。文学に隷従させられることを避ける。そんなわけでユイスマンスらは馬鹿な美術批評家としてのスケープゴートとなる。画家と批評家とのコンビで絵画の価値が作られる時代になってきたが、そんななかでも両者の関係はまた微妙なもの。文句言いつつも、文学に取り上げられない画家はまったくの無名なわけであって。2013/08/15
宵子
2
本の三分の一くらいが付録&注だというとても分厚い本。ルドンの話には物語性があり、ポーなどの当時の作家との関連についても説明されている。しかし、目で見る絵を文のみで説明するのは難しい……(;´д`)2013/05/05
eirianda
2
ルドンの絵は一見して物語性があるからこそ、今なお人を惹き付けるのだと思う。ユイスマンスや他の詩人たちが、それにインスパイアされ、自分なりの(ルドンの思いとは違う)解釈をしても、それは当然の成り行きだ。芸術などは様々な批評があるからこそ、長年に渡って作品が残る、というものだとわたしは思う。黒から色彩へと作風が変わるのは、思春期の物語が一旦終わりを告げた、ということだろう。ルドンのキュクロプスを描いた作品が好きなのだけど、それはこの本にはなかったな……。 2013/04/26