感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
29
本書は、コレージュ・ド・フランスにおける最終講義をまとめた『科学の科学』第3章を書き改めたもの。 『パスカル的省察』『科学の科学』と本書はブルデューが自分の仕事の理論的総括を試みた一連の書。 彼の意図は、「自己=社会分析のための素材をいくつか集めて提示すること」にあった。/ ブルデューは、【これは自伝ではない。】と言っているが、『ジル・ドゥルーズの「アベセデール」』や、ドキュメンタリー映画「ジャック・デリダ──思考の勇気」などと同様、本書を読むことで彼の生い立ちや先輩哲学者との関係や若い頃からの奮闘→2025/08/11
roughfractus02
10
スペイン国境に接するダンカンの庶民として育った著者がエコール・ノルマル・シュペリオールで哲学を学ぶうちにこの世界に違和感を持つ。自由な知識人を叫ぶ哲学エリート、サルトルの無邪気さから哲学を離れて科学史家カンギレムを指導教授に選び、アルジェリアへの徴兵時に人類学に接して社会学へ向かう。本書を自伝的に読むと、学生時代の哲学への違和感がハビトゥス、界、文化資本、象徴暴力等著者の理論概念を生む契機だったように見える。が、本書を「自伝ではない」と断言する著者は、死の床にあって自身を最後の分析対象に選んだのだという。2024/05/31
やまやま
10
これは自伝ではないと力説するほどに自分史ぶりが伺えるのですが、界の闘争を社会の一つの支配原理とされたブルデューとしては、この自己分析が自分を攻撃する材料に使われることを予感して、「自伝ではない」と述べたというのはよくわかる一方、出来過ぎ感もあります。自由な知識人というサルトルの呼びかけは「驚嘆すべき善意と無邪気の権化」であることを感じ、界を理解した著者には複雑な気持ちが浮かぶことは自然でしょう。アルジェリアでの兵役を、士官としてではなく遂行する若き著者の傾きは、現場主義の意義を改めて感じます。2021/01/04
ぽん教授(非実在系)
3
自叙伝としての機能「も」持つ、自己を社会学分析してみたもの、という狙いの下に死にかけてる中書いた絶筆でもある。狙い通りに完全に社会学出来てるわけではないような印象を与えるし、実際そこを突かれて(=単なる自叙伝として扱われ)フランス国内では左翼から「ブルデューは田舎者だと学生時代から馬鹿にされてきたルサンチマンで生きてきた主観的な人間だ!」という誹謗中傷を死後に受けている。死人に口なし、言いたい放題だ。一方で師匠アロンへの複雑な気持ちなど自叙伝らしさがあるから生々しい魅力があるように自分は思うのだ。2016/12/21
Yukako Uehara
2
批判も少なくない気がするけど、あんな長々とディスタンクシオンを書いた著者が自分自身を分析する際、何を思ったのか。かなり手短かに書いている気もするけど、編集の段階でどれだけ削ったんだろう。社会学系の本を読んでて、こんなにワクワクした事は一度もなかった。ブルデューを勧めてくれた先生に感謝。2014/12/23
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- 和書
- 詰パラ発!激辛5手詰