内容説明
ブルデュー自身が「最も優れた社会学者」とみたパスカルの加護の下、「知」の可能性を真に擁護するために、哲学的伝統が再生産する「知」の自己欺瞞(スコラ的幻想)を容赦なく打ち砕く。
目次
1 スコラ的理性批判
2 スコラ的誤謬の三つの形態
3 理性の歴史的諸根拠
4 身体による認識
5 象徴的暴力と政治闘争
6 社会的存在、時間、実存の意味
著者等紹介
ブルデュー,ピエール[ブルデュー,ピエール][Bourdieu,Pierre]
1930年生まれ。高等師範学校卒業後、哲学の教授資格を取得、リセの教員となるが、55年アルジェリア戦争に徴兵。アルジェ大学助手、パリ大学助手、リール大学助教授を経て、64年、社会科学高等研究院教授。教育・文化社会学センター(現在のヨーロッパ社会学センター)を主宰し学際的共同研究を展開。81年コレージュ・ド・フランス教授。02年1月死去
加藤晴久[カトウハルヒサ]
1935年生まれ。東京大学、恵泉女学園大学名誉教授。仏語仏文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
9
人々に「自然に」振る舞うことを説いたパスカルは、「自然さ」に無意識なる「自動機械」の存在を予想した。著者はこの「自然さ」と無意識を集合的歴史が作る社会的条件と見なし、個人の振る舞いに感覚や勘として出てくる非理性的領域と捉えて、パスカルを最初の社会学者と称える。一方、「自然さ」に神の意志を読む中世スコラ哲学の伝統はカント以後ハイデガーに至る近代哲学にも生きているとし、「自然さ」に人間の意図を読む「スコラ的幻想」として批判する。遠近法の形成をこの幻想の例とし、パノフスキーの分析に沿って展開する議論が興味深い。2024/05/29