感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
12
以前伊吹郷によって刊行された評伝の改訂版の完訳。尹東柱の生地は現在の中国東北部にあたり、清の衰退によって朝鮮人の入植が進み、そこに日本の侵略が起こり、更にはロシア革命による共産主義の影響もあり、「韓国」の枠組みでは捉えきれない場所である。その点から丁寧に解き、尹東柱の従兄宋夢奎が洛陽軍官学校で独立運動に関わっていたこと、そのことが日本の官憲の宋への警戒を招き、尹も死に至らしめた、と尹東柱の生涯を通して東アジアの近現代が見えてくる名著。考えさせられる部分多数。再読したい。2022/04/30
Grandpa
1
生誕100年の命日を前に再読。歴史修正主義者がなかったことにしたいであろう尹東柱の死。イルボンはかくも残酷になれるのだ。嫌韓、嫌中の運動大好き50男が跳梁跋扈する今の日本への警鐘でもある。2017/02/15
kozawa
1
非常に真摯で緻密を追求した書。特に危険な部類にも入らなかったであろう詩人がどうやって思想犯として戦中獄死し、その死が公表されながらもその生涯を正確に伝えることに制限あるなか時代が過ぎていったのか。同時代を知る上でも興味深い一例であるとともに韓国で伝説となっているこの詩人を最も良く知ることのできる良書2009/07/12