感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みつ
22
約2年前に読み始め、長らく中断していた本(5分冊の第1册)。原題の直訳は『フェリーぺ二世下の地中海と地中海世界』であり、専ら16世紀後半が舞台。ただし、スペインにとどまらず、記述はイタリアやオスマン・トルコなど地中海全体に及ぶ。当時の状況をつぶさに記すため、煩瑣なまでの固有名詞と統計が手強いが、第一部は「環境の役割」と第されているように、「不変なもの、恒久的なもの」(p594)である、地理的条件(半島、海、沿岸地帯)と気候(夏は乾燥し雨の大半が秋から冬に降る地中海性気候)を中心に読むことでなんとか理解➡️2024/07/31
roughfractus02
10
歴史は直線的に進むのではなく層を成して変動する。著者は数千年単位で動く地理的な長期変動、数百年単位の経済的な中期変動、さらに短い単位の政治的な短期変動の3層をルネサンスから近代に至る地中海世界に重ねた。「環境の役割」と題された本巻では、「ほとんど動かない歴史」の層でありその向こうに大西洋が広がる地中海の地理空間に、山と平野の間を移動する遊牧の民、沿岸や島を渡る船、砂漠を渡るキャラバンの移動や季節を刻む気候の変動が万華鏡さながら展開していく。すると、陸路と海路ができ、都市が生まれ、経済的な中期変動が現れる。2019/06/28
Nunokawa Takaki
7
歴史学者の間ではとんでもない名著になっているこの『地中海』。何回か挫折しながらようやく読み終えることができた。なにしろA4サイズで600ページもあるものだから、途中まで読んで途切れることが多かった。でも読み終えると、さすが名著だけあるな!地中海の奥深さが沁み渡ってくる。ひとつひとつの都市がまるで生き物のように動きまわっているようだ。ヴェネツィア、フィレンツェ、ジェノバ、ナポリ、ラグーザ、リヴォルノ、マルセイユ、アルジェ...この本で地名と場所を覚えることができた。2015/04/30
ゆずこまめ
4
歴史の本と思って読み始めたら、この巻丸々地理のお話でした。意外でしたが、歴史を語るのにこういう視点があるのかと新鮮でした。まだ先が長いですが楽しんで読みたいです。2018/07/14
堀田伸一郎
3
アナール派で有名なブローデルの地中海です。本巻では、主に地中海の地理的定義、気候、そしてそこに住む人間の暮らしが描かれています。単に山とは〜川とは〜といった話ばかりではなく、豊富な資料や統計を駆使し、そこに住む人間の生活や風景を描き出してくれます。資料から考察、推理を重ねて考えて行く様はまるでパズルのピースを考えるように新鮮でした。 歴史は暗記科目と思っている人には退屈かも。歴史上の出来事を地理や環境、政治的、経済的な要素を考慮しつつ歴史を見る人にはたまらない本。はまる人ははまる本だと思います。2012/10/26