内容説明
パリを極とする単一の世界大の文学場(世界文学空間)の歴史的生成と支配構造を初めて解析し、文学的反逆・革命の条件と可能性を明るみに出す。文学資本と国民的言語資本に規定されつつも、自由の獲得を目指す作家たちの闘い。
目次
第1部 文学世界(世界文学史の原理;文学の発明;世界文学空間;普遍なるものの製造所 ほか)
第2部 文学的反逆と革命(小文学;同化された作家たち;反逆者たち;「翻訳された作家」の悲劇 ほか)
著者等紹介
カザノヴァ,パスカル[カザノヴァ,パスカル][Casanova,Pascale]
1959年生まれ。論文『国際文学空間』で、パリ高等社会学研究所博士号取得(文学社会学)。現在、フランス=キュルチュール(ラジオ・フランス)の文学番組ディレクターを務める一方、様々な文学専門誌の文学批評家としても活躍し、同時に、パリ第一大学研究員として研究セミナーを主催している
岩切正一郎[イワキリショウイチロウ]
1959年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学。現在、国際基督教大学準教授(フランス文学)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ルートビッチ先輩
1
本書が提示する「国際文芸批評」は「新しい解釈法」などの記載から非常に新しいものとして見える。しかし実はそうではなく、そのような試みは戦後クルティウス『ヨーロッパ文学とラテン中世』によってなされていた。両者とも、その際に参照するのはヴァレリー・ラルボーだ。また、亡命を問題とする点はジョージ・スタイナー『脱領域の知性』と一致する。そして『世界文学空間』の提示するモデルはある種の異種混淆性への志向を持っており、20世紀において言えばバフチンと重なってくる(デュ・ベレーの「所有化」の表現はグロテスクだ)。2015/04/25
ルートビッチ先輩
1
文学が独立した何かではなく、その価値は政治的、社会的価値との関わりの中で生まれるということを、「知の地図」を「知的インターナショナル」のために提唱したヴァレリー・ラルボーに倣いながら著者は具体的な手続きに踏みこみながら語っている。それは全く自由な何かというわけではなく、文学においても中央があり、周縁があるというモデルになる(それが世界文学空間)。これによって文学史は各国史ではなく、そのとき中央だった地域に対して新しく参入する地域がどのような方策を用いたのか(所有化のプロセス)の記述となっていく。2015/04/21
Shun'ichiro AKIKUSA
0
2002年の時点で、岩切先生はどういうモチベーションでこの本を翻訳してくれたのだろうか。先見の明。2016/08/25