内容説明
戦前・戦中期の言論弾圧下、学問と社会参加の両立に生きた真の知識人、初の本格評伝。
目次
第1章 ロマンティックな青年
第2章 「大正デモクラシー」の申し子として
第3章 同志社時代と社会への眼
第4章 『現代新聞批判』とジャーナリズム修業
第5章 滞欧の日々―ファッシズム批判
第6章 『土曜日』の周辺で
第7章 松山時代―生涯最良の日々と楽園追放
第8章 叔父住谷天来の死
第9章 『夕刊京都』と戦後民主主義
第10章 戦後の住谷悦治
終章 日本の経済学を求めて―河上肇によって河上肇の上に
著者等紹介
田中秀臣[タナカヒデトミ]
1961年東京生。出版社勤務の後、1996年早稲田大学経済研究科博士課程単位取得退学。現在、上武大学商学部講師。専攻、日本経済思想史・経済学とメディア研究・サラリーマン研究
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感想・レビュー
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denz
3
吉野作造の弟子としてキリスト教、マルクス経済学を採るリベラル左派の住谷悦治を通して、大正から昭和期の左派言論人のサークルの出版物などを紹介することで、主流ではないものの当時の地域的・階層的に多様な言論状況をメディア史としても読める。著者は、キリスト教にも社会主義にもそれほどの同情はないとしつつも、住谷の学問や時事問題に対する、その起源や沿革をさぐる歴史的解釈の手法に着目して、学問の内容や水準そのものではなく姿勢を評価する。またそれは著者の現在の時事に関する活動や姿勢にも通じるものがあるのだろう。2013/02/27
ハンギ
1
2001年に出版された、住谷悦治についての経済思想の本。四分の三くらいが人生についての紹介で、残りが住谷の経済学の業績をまとめたもの。客観的な書き方と、たぶん一番最初の本格的評伝ということで読む価値があると思います。ただ、やや住谷さんの描き方が型にはまっているというか、よく戦前にいた、リベラル的な知識人の枠から外れることはないかな、と思ってしまうのが残念でした。けれどもキリスト教徒の社会主義者として、マルクス主義(福本イズム)には同調しなかったものの、倫理的な経済学を模索した、という姿は印象的でした。2012/11/27
tatakuma
0
住谷悦治という人間の、己の正義を貫き続けようとする意思が作る『他者から強制された「黙」を、自らの信念によって鍛え上げ』社会と距離を置かずに、寧ろ積極的に社会に関わっていこうとする抵抗の姿勢に、強く心を打たれました。2013/09/08